コラム

今月のコラム

2023年01月号

歯科医院経営を考える(541)
~不況下の物価高用~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 ウクライナへのロシア軍の侵攻が始まって以後、世界の治安状況が極めて悪くなってきており、東アジアの軍事情勢も大きく変わりつつある。それに並行して生活上不可欠の燃料や食料がスムーズに海外から入らなくなると同時に円安で輸入物価がじわじわと上がり始めており、それがじりじりと消費者物価の上昇に表れている。日本のカロリーベースの総合食料自給率は38%と言われるが、食料の海外依存の大きさから見て、今後世界経済の状況によっては極端な輸入の物価上昇、生活費の高騰を予想せざるを得ない。日銀の令和4年10月の企業物価指数は、対前年比で8.2%の上昇、輸出は13.0%、輸入は36.5%の上昇となっている。これが今後実際の物価に影響を与えることは明白であり、これが更に消費者物価に反映されることは確実である。例えば国は今年4月に小麦の民間への売り渡し価格を17%値上げしたが、ロシアのウクライナ侵攻への影響が出る前の価格だと言われている。それ以後の価格は据え置いたままとをっており、令和5年4月に再改定の予定だというが、その場合はウクライナ、ロシア双方の輸出停止後の影響が確実に出てくるのではないか。さらに電力会社が3月から3割程度の値上げを国に申請しており間違いなく引き上げられるだろう。新年にはいって諸物価の値上げラッシュが続く可能性が避けられない。一方で台湾を中心とした東アジアの政治状況が極めて危機的状況になってきており、他国の支援を前提にした我が国の防衛政策は絵に措いた餅になりつつある。防衛の専門家による日本の防衛予算費の増額は5年間の予算額として48兆円が必要と提言している。こうして急に浮上してきた巨額の財政問題について財務省は法人税の引き上げ、高所得者の所得税引き上げ、及び東日本復興税の1%を転用(復興税を1%引き下げ延長する)するとし、防衛費については令和5年に先送りをしている。ただこうした巨額の資金を調達する方法は、増税以外に一つしかない。この経済状況で増税はあり得ないから国債(国庫債券)を発行して日銀に引き受けさせる方法だ。ただ財政法第5条で「日銀に引受けさせてはならない」と禁止しているが、「但し特別の理由がある場合には国会の議決を得た範囲内で」認めている。変動為替相場制度を採用している日本で、自国通貨建て国債が債務不履行になる可能性はゼロに等しいから早急に実施すべきである。政府が国債を発行し、それを政府の子会社である日本銀行が買い取れば、償還(返済)や利払いの必要性がなくなるからである。但しインフレへの配慮は必要であるが…。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2023年 1月号より転載〕