2017年 3月号
歯科医院経営を考える(474)
~感情を持つロボット~
デンタル・マネジメント
コンサルティング
稲岡 勲
患者の口腔内の写真を撮って送るとインプラントを入れるために、歯肉をどのような角度で、どのように開いて植立すれば最も患者負担が少なく、安全にインプラント手術ができるかの方法について教えてくれるというサービスが出てきたと聞いたが、歯科医療にもコンピューターの技術が導入される時代になった。CAD-CAMの技術等は完全に従来の技工所のイメージを変えてしまったと思う。さらに最近は人工知能が話題になってきており、医療の現場ではCTやMRIスキャン等で撮影した画像をディープラーニングにより学習することで医者でさえ発見できなかった病気を発見することが可能になったと報告されている。人工知能は成熟度に応じて4段階に分けられるという。単純な制御プログラムから、将棋の名人と勝負して勝ったというコンピューターが話題になったが、これが第2レベル。機械学習を取り入れた人工知能が第3段階で、これはインターネット等の検索エンジンが代表的な存在である。そうして今話題になっているのが、ディープラーニングが取り入れた第4レベルの人工知能である。ディープラーニングとは、機械が物体の特徴を自力で学習することができる技術である。ソフトバンクが開発したロボットのペッパーは、人工知能を搭載していることで話題になったが、ペッパーは感情エンジンと呼ばれる人工知能を搭載しており、人の感情を読み取ることができるためユーザーの悲しみに共感したり喜びを分かち合ったりすることができるという。米マイクロソフト中国拠点が開発した人工知能の人形に中国の8900万人がスマホの画面上で対話を楽しんでおり、いつの間にか友情や恋愛感情を感じるようになったと報告されている。今や人が感じる五感を駆使して人の感情や、気づき、気配りまで計算して表現するというロボットが生まれてきているのである。学習技術と呼ばれる有益な知識やパターンを記憶し、タイミングよく導き出すことでAIの継続的な成長を支えていると言われている。1月30日付日経によれば英国ではパートナーロボットについてネット上でも議論されていると報じている。高齢になって配偶者に先立たれたら、人間の再婚相手を探すのは容易なことではないが、心を通わせ、その後の人生を一緒に歩んでくれるロボットを手に入れて一緒に暮らせばよいという。しかしいくらロボットが精巧に作られていても生身の人間を超えられるのか?所詮ロボットは最大公約数的な感情を持つ存在ではあろうが、人間のようなその人独自の個性までは持ちえないと思う。
(つづく))
〔タマヰニュース2017年 3月号より転載〕