2016年07月号
歯科医院経営を考える(466)
~税務調査~
デンタル・マネジメント
コンサルティング
稲岡 勲
税務署の人事異動は毎年7月10日付で実施される。だからこの前後の日程での税務調査はまずない。上記のような事情で6月の調査は何か重要な案件があっての調査ではなく定型的な調査だと言われる。6月の調査は比較的軽く、形式的な調査である場合が多い。人事異動後の9月~12月は本格的な税務調査期間である。
もう40年以上も付き合っている知り合いの先生が6月の中旬、税務調査を受けた。この先生の場合は5年前にも調査を受けており大体5年おきくらいに調査を受けている。この先生の税務調査は2日ほどで終了したが、230万円の自費収入の漏れが判明して追徴され、過少申告加算金(10%)、延滞税(14.6%)を支払うはめになった。意図的な自費収入隠しではなく計算ミスから生じた結果であることが分かり重加算税(35%)にはならなかった。
最近は歯科医院の調査もかなり減少してきている。高度経済成長時代の昭和45年~60年頃は歯科医院の税務調査も頻繁に実施されたが、経理の内容もいい加減でデパートでの洋服や趣味の絵画購入や娘の結婚費用まで経費になっていたケースもあった。国税局による査察や最近はあまり聞かなくなった「無予告調査」も多かったが、今はそれだけ収入が上がらなくなったという事情もあるのだろう。国税局の発表では2015年度の脱税総額は138億円で41年ぶりの最低水準だったと発表している。税務署も人手不足で全部調査するわけにはいかない。だからきちんと信頼できる経理をし、申告していれば何回も調査を受けるということはない。
開業以来42年間税務調査は1度も受けていないという先生もいる。そういう先生の経営比率は極めて安定しているのが特徴である。税務署もいろいろ統計を取っているから歯科医院の経営比率も正確に把握しているはずである。例えば接待交際費の収入に対する比率は1.3%~1.5%程度が平均だと思う。それが3%を超える比率(6%を超えている先生もいる)になっておれば接待した相手先や接待の理由等をメモしておくぐらいの手間は不可欠である。収入面では保険収入、特に窓口徴収額についてきちんと記録するとともに、未払いの患者に対しては再請求して、それでも未収となった場合は翌年に「貸倒金」として処理するくらいの慎重な処理をするべきであり、自費収入は必ず日計表に記載して領収証を発行する。筆者の調査では院長の行動に伴う費用として接待交際費、燃料費、研究図書費を収入で割った費用として「院長費用」という比率を出しているが、院長の行動力を把握する一つの指標として計算している。これは毎年3%前後で推移している。
(つづく))
〔タマヰニュース2016年07月号より転載〕