コラム

今月のコラム

2010年 2月号

歯科医院経営を考える(389)
~保険の枠を超えた発想を~

デンタル・マネジメント
コンサルティング

稲岡 勲

 日本からも多くの患者が治療のために訪れている韓国のYe歯科医院では、独自の治療のための歯科材料ブランドまで作って成功を収めている(一時経営不安の情報が流れたが、現在は経営を継続している)。また韓国の病院でも特異の治療技術を活かして海外、特に中国から患者を呼び寄せて繁盛を極めているという。これは昨年からのウォン安も大きな味方になったものと思うが、国を挙げてこの戦略に取組んでいる。こういう点で日本は大きく立ち遅れていると思う。財政状況の先行きに暗雲が立ち込めているのだから、医科・歯科ともに思い切って海外からの自費の治療ツアーを誘い、技術の高度化に力を入れることが重要なのではないか。Ye歯科医院の経営ノウハウ等いくら仕入れても日本独自のノウハウを作らなければどうにもならないのだ。アメリカを始め一部の国の富裕層の観光客が京都や奈良にやってくるが、多くは日本の旅館に泊まるという。それは日本独自の親身なサービスにあるといわれており、常に満杯になっているという。日本の治療技術は安い治療点数の下で効率よく、献身的な対応で発展してきた。それを今生かすときではないかと思う。高齢者が増えていく中で高齢者の慢性医療に努力するのも必要ではあるが、もっと急性医療の治療にも力を入れるために海外から若い患者や人を呼び込み高度医療の技術を高める必要性があるように思う。

 

 徳島大学と徳島県が連携して、得意の高度な医療を打ち出し海外から患者を呼び寄せると共に観光にも力を入れて治療と観光のツアーを組むと言う戦略を立てているという。また九州では「航空券はタダ」という航空会社の設立が構想されていると日本経済新聞は報じている。訪日客には航空券の代わりに「九州バウチャー」という「擬似通貨」を買ってもらい、それで九州各地で買い物や旅行をしてお金を九州内で落としてもらう。1人10万円分を九州各地で落としてもらえば、1日1000人として年間1000億円になるという。そこでJTB九州や西鉄、九州電力等と福岡県、九州大学が中心になって構想しており、九州各地の空港と北京、上海の空港を結び、中国人旅行客の訪日需要を掘り起こすという。以前にも取上げたが、日本には計画中も含めて98の地方空港がある。日航が法的整理に入ると飛行機が飛ばない空港になる可能性が高い。能登空港は定期便が1日2便しかこないが、チャーター便は年40~50便が飛来しているというので、中国や台湾からの観光客を呼び込む戦略を考えているという。国境を超えて観光客や医療ツアー客を取り込む戦略は人口減少の日本にとって経済活力の源泉になり、また医療需要の再生につながると思う。歯科は差額徴収に走って保険点数の引き上げに積極的に運動してこなかったという反省が聞かれるが、今後は保険に頼れなくなるという発想を持つべきだ。そのためにも国や地方の規制を緩め、地方が自由に動ける体制が不可欠である。いちいち国の許可を取らなくても民間企業や医療機関が自由に行動できる態勢(ただし保険医療以外)が必要だと思う。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2010年 2月号より転載〕