コラム

今月のコラム

2011年 7月号

歯科医院経営を考える(406)
~原子力の安全に向けての組織づくり~

デンタル・マネジメント
コンサルティング

稲岡 勲

 東日本大震災が発生して100日が過ぎても福島原発事故は終息を迎えていない。国際原子力機関(IAEA)が東京電力福島第1原発事故に関する包括的な報告書をまとめたという。日本の複雑な体制や組織が緊急時の意思決定を遅らせる可能性があると指摘、東京電力と規制当局、政府間の足並みの乱れによって事故対策が後手に回ったことに警鐘を鳴らしていると毎日新聞は報じている。今回の原発事故によってそれに関わる団体、組織の実態が見えてきたように思う。当事者の東京電力をはじめ原子力安全保安院、原子力安全委員会、それに政府が今回の事故でどのような対応をしたかが問われなければならないし、検証すべきだと思う。

 

 東京電力は福島第1原子力発電所の事故直後の状況を公表したが、3月11日14時46分に東日本大震災が発生し、15時37分には津波による全交流電源が喪失した。そうして翌日の朝の6時には炉心が溶融したと報告している。さらに炉心の溶融が進むと水素爆発を引き起こしかねない。そうした事態を防ぐために格納容器や圧力抑制室についている弁を開けるベント作業も遅れた。3月12日の午前1時30分頃にべント実施を首相、経産相と保安院に申し入れし了承を得たが、実際にべントが実施されたのは14時30分である。そうしてその日の15時36分に原子炉建屋で爆発が起こり、多量の放射線が放出された。前福島県知事の佐藤氏は「東電は福島県民に安全神話を信じ込ませることだけに注力し、原発の安全を守ることをおざなりにしてきた」と批判している。第1原発が稼働して以後2008年までの間に161件の原子力発電にかかる事故を起こしていて、その多くが公表されていないのだという。

 

 これに対して原子力安全保安院は通商産業省の行政の一部門であり、国策として通商産業省が原子力エネルギー政策を推し進める中、その傘下にある原子力安全保安院が中立的な立場でチェックできるわけがない。東電からの内部告発者によって出てきた内容を、その告発者名とともにそっくり東電に流していたというお粗末さである。

 

 また原子力安全委員会は行政から独立した機関で、中立的な立場で国による安全規制についての基本的な考え方を決定し行政機関並びに事業者を指導する役割であり、内閣総理大臣を通じた関係行政機関に対して勧告権を有すると設立趣旨に謳われ通常の審議会にはない強い権限が与えられている。その原子力安全委員会の委員長が水素爆発は起こらないと断言していたのだから何を信じてよいかわからない。この原子力安全委員会が独立した機関であり一番しっかりしていなければならない組織のはずだが、原子炉安全専門審査会をはじめ核燃料安全専門審査会、緊急事態応急対策調査委員会等の部会を持ち、これ以外に必要に応じて14会議(平成23年4月時点で総勢250名)に及ぶ専門部会が持たれている。こうした組織を束ね、一段高い視点でとらえて結論を出すのが政府であろう。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2011年 7月号より転載〕