2013年 5月号
歯科医院経営を考える(428)
~有能な人材と国際競争力~
デンタル・マネジメント
コンサルティング
稲岡 勲
大分空港から大分自動車道を通って大分市に向かうと、別府湾を一望のもとに眼下に見下ろす展望台がある。絶景の景色だが、その展望台のすぐ下に広大な立命館アジア太平洋大学の校舎や研究棟が見える。風光明媚な立地で日本でも最高の大学立地だと思う。この大学は学生数5,000人とそれほど大きくはないが、90か国から外国人留学生が
2,644人と半数以上にのぼる(H20年5月現在)。2位の早稲田大学の2,608人、東大の2,088人に比べ学生総数に対する比率からすれば圧倒的に多い。(2014年に日本で学ぶ留学生は14万人)日英2か国語が自由に話せるよう教育されると聞くが、特にアジアの国々の多様な文化や社会、経済、環境等の内容を、国際経済学部は国際的人材の育成に力を入れている。こうした教育カリキュラムからアジアに進出している企業から求人が殺到して就職率が95%~97.5%という。大学の宣伝をするつもりはないが、こうした国際的な人材育成が今我国に求められていると思う。
4月22日NHKの朝のTVで、世界の100か国から5万人の学生のデーターを集めて日本企業に紹介している会社が紹介されていた。インドやシンガポール、イギリス等一流大学を直接訪問してデーターを集め、日本企業100社に1,000人の外国人を送り込んでいるという。生命保険会社の人事部長は「国籍を問わず優秀な学生をどうしても採っていきたい。必然的に外国人採用が徐々に増えていく」といい、学生を紹介する会社の社長は「企業が世界で勝負していくからには、世界中の70億人から優秀な人材を獲得する方向に少しずつ変わり始めている」と言っている。一方2012年に文部科学省が50万人の高校に実施した調査で、「いつか留学したいと思うか」との質問に「留学したくない」と回答した高校生が58%だったという(日経)。その理由は「言葉の壁」(56%)、「経済的に厳しい」
(42%)、「外国での生活や友達関係が不安」(34%)としている。
一方留学支援をする自治体は12年度で39都道府県、前年比2倍に増えており、下村文部科学大臣も高校生の留学も2倍の6万人に、大学、大学院ではこれも現在の2倍、12万人に増やす方針という。行政府の方では留学生を積極的に増やそうとしているようだが、それに応えて留学したいという学生が多くないようだ。大学生とは違った意識なのかもしれないが、最近の高校生は堅実で現実的なのか、希望を聞いているのだから現実はどうあれ行きたければ「留学したい」と答えてもいいように思うのだが。欧米のように秋の入学を検討している大学が増えてくると、3月に高校を卒業して9月入学までの期間留学するという高校生も増えてくるかもしれない。歯科に限って言えば、保険医療は完全に国内に目が向けられているが、保険医療と国際的な歯科治療技術が徐々に遊離していくのではないかと思う。
(つづく)
〔タマヰニュース2013年 5月号より転載〕