2013年 10月号
歯科医院経営を考える(433)
~高齢化率の上昇と医療費~
デンタル・マネジメント
コンサルティング
稲岡 勲
日本の高齢化率(全人口に占める65歳以上の人口比)が急激に上昇している。2010年における高齢化率は22.7%で世界最高の率だと言われている。(第2位はドイツで20.4%、3位はイタリア、ギリシャの18.6%)今後も高齢化率はさらに高くなり人口問題研究所の推計(出生中位、死亡中位で推計)によれば2020年で19.1%、2030年-31.6%、2040年-36.1%となり2080年には41.2%になり、率、スピードともに世界最高である。理由は日本人の寿命が延びたことと子供の出生率の低下である。
現実を受け入れるしかないが、それを逆手に取って売り上げを伸ばしている業界もある。流通業界の大手では食品関連のデリバリー(配達)に力を入れてきている。セブンイレブンが「セブンミール」という名称で惣菜や弁当を宅配しているし、マクドナルドの実験店では宅配ビジネスを始めているところもある。帝国データーバンクの資料によれば、食材宅配会社の数は全国で2058社に達するという。これには店頭で購入した商品をその購入した人の自宅まで宅配する会社も含まれるというが、その売上額は2010年度で11兆5070億円になるというからその大きさに驚く。しかもこの続計には出てこない個人の商店でなじみの顧客の買い物を自宅まで届けている商店も含めれば膨大な金額になると予想される。また日本生活協同組合連合会の2010年度の経営統計では個人宅への宅配供給高が、店舗での供給高を初めて上回ったという。いずれにしても宅配が年々増加するのは、一つには主婦が働きに出るようになり、買い物ができないから宅配が増えるということと、買い物に行けない、ないしは行かない高齢者が増えてきて宅配に頼る家庭が増えてきている証左でもある。ヨシケイという夕食食材宅配会社の場合の例を見れば、高齢者向けに冷凍弁当3食セット(栄養士がカロリーや栄養等考えメニューを考え調理されている)を990円で配送料無料の宅配をしている。
このように増え続ける高齢者をプラスの消費力、需要増にどう結び付けていくかが我が国にとって重要な課題だと思う。ただ医療に限って言えば、GDP(国内総生産)に占める医療支出の割合が9.5%(2009年)とOEDC参加国34ヵ国中19位でアメリカの17%の約半分でしかない。アメリカの場合は、公的保険は高齢者及び生活保護者向けの保険しかなく、また医療訴訟も多いからその分医療費も高くなるのだろうが、日本の医療費の場合は公的医療保険でかなり厳しい制約が課せられているからではないかと思う。GDPに対する医療費の比率が低いということは医療費の効率が高いという面もあるが、人口の高齢化率から見てももっと医療費が大きくなってもよいのではないか、特に最近の歯科医療においては歯周病と糖尿病の関係に見られるように口腔疾患と全身疾患の関係が解明されてきており、今後の超高齢化率の社会が実現する前にこうした医科、歯科連係による治療を進め、80歳、90歳になっても健康に過ごせる健康づくりや予防にもっと医療費を使うべきではないか。
(つづく)
〔タマヰニュース2013年10月号より転載〕