コラム

今月のコラム

2012年 12月号

歯科医院経営を考える(423)
~三つの勘違い~

デンタル・マネジメント
コンサルティング

稲岡 勲

「今後十数年に、日本中で高齢者が増え続け、特に高齢化が進んでいる過疎地を中心に全国共通の問題として対策を急速に進める必要がある」というどこかの新聞記事で見かけたような内容の話には三つの勘違いがあると、国際医療福祉大学大学院の高橋泰教授が指摘している。

 

先ず「今後数十年に、日本中で高齢者が増え続ける」というのは本当か?「高齢化率の上昇=高齢者数の増加」と勘違いしているという。高齢化率とは、総人口に占める65歳以上の人口の比率をいうが、平成23年10月1日現在では23.3%である。65歳以上の高齢者数は、2015年を過ぎるとほとんど増えなくなり、2030年過ぎには75歳以上の後期高齢者が減り始める。

 

一方「0歳~64歳」は2005年頃から急速に減少し始め、その傾向は今後数十年続く。特に経済を支える15歳から64歳の人口が今後10年間で7,874千人減少(出生率中位、死亡率中位)すると予測されている。「高齢化率の分母が減少するために分子は大きくならなくても高齢化率が上昇する。支える人にいかに負担を掛けない老い方・死に方をするかが、重要になってくる。その意識転換をしないと社会がもたないかもしれない。65歳定年等という現状の社会通念は打破すべきで、元気で働ける人は70歳でも、80歳でも働くべきである。東京都内で開業している知り合いの歯科の先生は83歳でも奥さんと元気に診療されている。また高齢化が過疎地を中心に進展するというのも錯覚だという。2005年頃から都市部の高齢化のスピードが加速している。2010年から2025年までの15年間で、全国で700万人の後期高齢者が増加するが、その増加部分の55%が、日本の国土面積のわずか2%にすぎない首都圏、名古屋圏、大阪圏に集中するという。少し前に東京都から年金をもらっている高齢者を、岩手県の老人福祉施設が勧誘して呼び寄せ、預かっている老人を虐待し搾取していることが明るみに出て大きな問題になったが、今後大都市圏での高齢者が溢れて福祉のレベルが大きくダウンし、地方へ流出せざるを得ない状況になるのではないか。

 

また高齢化は全国共通の問題というが、全国共通ではなく、地域別に考える必要があるという。2010年から2030年までの間に、75歳以上の後期高齢者は、埼玉で2.15倍、千葉では2.03倍、神奈川では1.93倍等に増加する一方、島根が1.18倍、山形が1.2倍、秋田が1.22倍等の1倍強にとどまる。今後は大都市圏での高齢者福祉の問題が浮上してくるとともに、どうしたら元気で歳を重ねるかが課題になる。高齢者の健康維持のためにも、歯の健康維持は不可欠となり、PMTCやスケーリング等、また義歯の調整や噛み合せ障害等、自医院患者の高齢化に伴う問題を整理して、どうするかの対策を考えておくべきである。

(つづく)

 

〔タマヰニュース2012年12月号より転載〕