2009年 6月号
歯科医院経営を考える(381)
~インフルエンザへの対応~
デンタル・マネジメント
コンサルティング
稲岡 勲
5月22日より神戸市の国際会議場で開催予定であった「日本精神神経学会学術総会」が5月18日になって急遽中止となった(20日時点では中止か延期かは決まっていない)。新型インフルエンザの国内感染が神戸市で確認されたからである。5000人の参加者が予定されていた大きな学会が、1週間を切った段階で突如中止というのは我が国では初めてではないか。海外からの招聘された講師もいたと聞いているし、多くの参加予定者もホテル予約をしていたと思う。また会場のキャンセル料も多額で、その影響は大きい。同時に神戸市内で開催予定であった日本麻酔学会学術集会も急遽8月に延期になっている。19日現在で神戸市内の感染者は64人である。これしきの感染者数で中止や延期とは…等々の意見もあろうと思うが、しかしどちらの学会も英断であったと思う。それは対象者が医師だからである。弱毒性とはいえもし感染すると患者や病院等に甚大な影響が出て社会的な問題になるからである。より慎重に対応するというのがこの場合の対応方法だと思う。
今回初めて国内感染が明らかになったきっかけは、神戸市内の開業医の機転があったとされている。5月17日、渡航歴のない男子高校生が、せき、のどの痛みを訴えて来院したが、風邪だと診断して帰している。ところが翌日午前に再来院した時には37.4度の熱があった。検査をしたらA型であったという(同じA型でも、従来のソ連型、香港型があるという)。そこで、①海外では若者を中心に感染が拡大している。②季節性インフルエンザの予防接種を受けている。③所属していたバレーボール部では複数の生徒が発症している、という事実と、④国は入国する人を機内や船内で防疫しているが、感染しても発症前でまったく症状が出ない人がすり抜けている可能性があると推定して、医師会を通じて県に検査依頼をして、初めての新型(豚)インフルエンザの国内感染の患者と診断されたという。
これに対して連日のTV報道に見られたように防疫服を着た検査員が次々と飛行機に乗り込む映像が映し出されて、国の防疫体制のものものしい対応ぶりをみてきた。また冷静な行動を望むといいながら、一番あわただしく過剰に反応しているのは国である。弱毒性と致死率も季節性インフルエンザと余り変わらないということが分かっているのだから、もう少し規制をゆるめてもよいのではないかと思う。それよりも発症前で本人も自覚しておらず何らの異常が認められない人がすり抜けて入ってくることを想定していなかったのかと疑問に思う。このような場合は、個人情報保護法の適用除外として徹底した追跡調査が不可欠だ。対策として、①栄養と休養、②室内の湿度を高める、③予防接種、④マスクの着用、⑤手洗いとうがいが有効だそうだが、そのマスクも売り切れて手に入らない。心臓病や高血圧の患者や妊産婦が感染すると重症になる可能性があるそうだから、先ずこうした人を重点的に保護すべきだ。和泉大津市では妊産婦に対してマスクを5枚ずつ無料で配布しているが、このような対応を国や自治体はもっと積極的に実施する必要がある。歯科医院においても感染した患者が来院する可能性が出てくることを想定して、職員のマスクの準備や患者への対応を想定して訓練しておくべきである。
(つづく)
〔タマヰニュース2009年06月号より転載〕