コラム

今月のコラム

2011年 9月号

歯科医院経営を考える(408)
~人生の舞台・職場~

デンタル・マネジメント
コンサルティング

稲岡 勲

 やはり夏は高校野球の季節だ。ついつい高校野球のTV観戦をする機会が多くなる。どこの高校を応援しているわけでもないが、若い選手が一生懸命戦っているとついついこちらも力が入る。それにしても滋賀の八幡商業と東京の帝京高校の試合は劇的だった。8回までわずか2安打で2塁も踏めなかった八幡商業が、土壇場の9回表3連打で1死満塁とし、ショートのエラーで1点取り、続く遠藤が満塁本塁打で逆転した。帝京の背番号10の渡辺投手は「直球で押しきれると思っていたが置きに行ってしまった」と悔やんだという。帝京エースの伊藤は09年に1年生として出場し、剛速球で注目されたと言うが、次の試合のために温存されていた。出場の機会はなく「甲子園は僕の原点。1年生の夏に出てまた帰ってこられて良かった」と涙もなくさっぱりとした表情だったと記者(毎日新開)は書いているが、本人は悔しい思いをしていたことは間違いないだろう。

 

 習志野と金沢の試合も1点を追う緊迫した好ゲームであった。150キロの速球を投げる金沢の大会屈指の好投手釜田は、7回表に1対1の同点に追い付いたその裏、2死後に9番の在原にセンター前に打たれた。次の宮内にはフルカウントから外角低めのスライダーが外れて四球を与えてしまった。最近のTV中継は画面が大きくなったことと鮮度が上がったために選手の表情が非常によく読めるようになった。宮内への四球の最後の球は、「この日一番の球だったと後で振り返っているように、外角低めのスライダーだったが、審判はボールと判定した。一瞬「アレっ」という表情をした。続く片桐を迎えて「気持ちが上がらないまま、投げてしまった」と本人が振り返っているように、レフト前に打たれて1点取られ敗退した。

 

 甲子園という舞台は球児たちにとって晴れやかな舞台であると共に、多くのことを学ぶ場でもある。あまり知られていない無名の高校が最初に1勝することで俄然注目を浴び2勝、3勝と勝ち進んで行く場合がある。八幡商業もそれに類すると思うが、試合することで実力と自信をつけて勝ち進む場合がある。逆に優勝候補と噂されながら実力を発揮できずに1試合で敗退することもある。大会屈指の好投手釜田でさえ、心の整理がつかずに投げた1球に泣くこともある。高校野球の監督も人間であるから、勝つための野球をすることが目的ではあっても人情が絡む。しかし全員に納得をさせ、協力させながら一つの方向へ導いていかないとチーム力が上がらない。選手の個性を把握しておかないと全体を束ねることができないが、個々の個性をどう引き出して全体の雰囲気、チームワークを高めるか、それを個々の選手に意識させながら個人もチームも成長させることが求められる。

 

 歯科医院の院長も全く同じだと思う。派手に応援してくれる観衆はいないが、応援してくれる患者がいる。それぞれの職場で輝かせて自信を付け、全力投球することで実力を付け、チーム力を高めることが経営競争への勝利につながる。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2011年 9月号より転載〕