2011年 1月号
歯科医院経営を考える(400)
~高齢社会への対応~
デンタル・マネジメント
コンサルティング
稲岡 勲
明けましておめでとうございます。今年もご愛読、宜しくお願い申しあげます。
東京都内の、1軒が1億円も2億円もするマンション(これを「億ション」と言うそうだが)がよく売れているという。この不況下で誰が買っているのかと思ったら、中国人と日本人の高齢の富裕層だそうである。今中国の富裕層が海外に住居を移しているというからうなずけるが、日本人の高齢の富裕層がなぜ都内の億ションを買うのか?理由は東京都周辺の他県に住むお年寄りが、体が弱くなって交通の便利な都心の防犯完備のマンションに移り住んでいるのだという。筆者の住んでいる橿原市周辺でも同じような現象が出ている。今年近鉄沿線の駅前に80室のマンションができたが、売りに出して間もなく完売した。若い家族も入っているがお年寄りも多い。周辺の交通の不便な町や村から移り住んできている。前に息子や娘達が村や町から出てきて市内に住んでおり、親を呼び寄せているのだという。こうした現象は多分今後も続くのではないか、いや益々増加すると思う。みんながその様な行動を取ると言うことではないが、余裕のあるお年寄りや、子供が呼び寄せるという場合もある。さらに今後交通不便な地方での高齢者の生活実態を考えると、高齢者同士の協同住宅や集合住宅が増えることも予想される。
こうした現象が進むと、歯科医院経営における立地条件も大きく変わらざるを得ない。診療所の近くにある大きな工場が閉鎖されたというような極端な例ではないが、徐々に進んでいくだけに見落としがちになるが、歯科医院も人の動きに敏感に反応する必要がある。と同時に患者層も徐々に高齢化する。今年の夏は猛暑が続いたから予約のキャンセルが多かったが、高齢が進んでいる地域の歯科医院ほど多くなっている。雨が降ればキャンセルが増えるとか、補綴物、特に義歯の修理が増えるといった現象が多くなる。デパートでは高齢者のための「おもらしによる下着の着替え場所」まで作っているところがある。来院してから帰るまですべてにわたって高齢者が快適に治療を受けられる環境かを検証してみることも必要になるのである。例えば診療所の入り口をバリアフリーにする等というのは常識にさえなっているし、院内の掲示板もーつ大きい文字に替える必要がある。スリッパに履き替えず靴を履いたまま診療が受けられるようにする、廊下や診療室まで手すりをつける、あるいはスタッフは待合室まで次の患者を迎えに出る等である。天草では患者のためにバスを走らせている歯科医院がある。より多くの患者さんの来院を期待するなら、高齢社会ではこういうサービスも必要不可欠になってくる。診療内容も含めて高齢社会への見直しが不可欠である。
(つづく)
〔タマヰニュース2011年 1月号より転載〕