コラム

今月のコラム

2012年 10月号

歯科医院経営を考える(421)
~ブルーオーシャン戦略~

デンタル・マネジメント
コンサルティング

稲岡 勲

 登記上の本店を山口市佐山に置くユニクロ(ファーストリテイリング)は商品企画から生産、物流、販売までを一貫して行うSPA(アパレル製造小売業)のビジネスモデルを構築し、高品質のカジュアルウエアーを中心に、手ごろな価格で売ることで飛躍的に売り上げを伸ばし、成長を遂げた会社だが、保湿性に優れた「ヒートテック」や「ブラトップ」、発汗性、防臭性に優れた「シルキードライ」、「サラファイン」等従来の衣料品にはない機能性を持った製品を生み出して成功している。1998年頃には「フリース旋風」といわれるフリース(ポリエステル系の一種で、肌触りがよく、保温性、即乾性、軽量で洗濯が可能)で一段と売り上げを伸ばしている。ユニクロの強みはこのカジュアルウエアに特化したところにあると指摘されているが、昨年のグループ全体の売上高は8203億円、店舗数2088店、内海外が275店である。

 

当初宇部市で「メンズショップOS」として出発し、1984年に広島中区で「ユニーク・クロージング・ウエアハウス」を開きユニクロ第1号店がオープンしたとされる。2002年~2003年にかけて業績は振るわなかったがフランスの婦人服企業やランジェリー製作会社等を買収してグループ化を図り、その後二桁成長を遂げている。ユニクロがここまで大きく躍進した理由は、その経営戦略にあるとされる。従来のアパレルメーカーはファッション性を重視するあまり、誰でも気軽に着られるカジュアル(普段着)を軽視する傾向にあったのを逆手にとって、先ずカジュアル商品に特化したこと。SPAという商品企画から、生産、物流、広告宣伝等の機能を一貫して行う垂直統合ビジネスモデルを採用したことが大きい。また新たな需要を生み出す戦略としてブルーオーシャン戦略をとっている。(レッドオーシャンのように競争の厳しい市場ではなく)このブルーオーシャン戦略は、競争者の居ない新たな市場でユーザーに高付加価値で低コストの商品を提供しようとする戦略である。例えばシルクを使ったシャツ等素材は良いが値段は「あれっ!」と驚くほど高くないという商品を手掛けている。そうした戦略が成功するのは、今までと違った客層を視野に置いているからで、競争者がいないのである。

 

日本では今後も益々所得格差が大きくなると言われているが、高所得者か低所得者のどちらかを対象にするのではなく、別の違った角度から客層を捉える思考が必要になってきている。歯科医療においても、保険か、自費かという発想だけから見るのではなく、生活者の立場からより自然歯にちかく、硬くて噛みやすい歯を、少し無理をすれば支払える価格で提供できないか。ジルコニアクラウンとか、ハイプリッドセラミック、オールセラミック等々、患者視点で見直して見ることが必要になってきていると思う。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2012年10月号より転載〕