コラム

今月のコラム

2008年 10月号

歯科医院経営を考える(373)
~資産防衛~

デンタル・マネジメント
コンサルティング

稲岡 勲

 ある先生から電話で次のような相談があった。それは先生の取引している唯一のK銀行が、つい先日倒産したアメリカの大手証券会社、リーマンブラザーズ証券の発行した債権を71億4,900万円も保有しているという記事が出たが、大丈夫か?どのように対処すべきか?という。その銀行は国から2年前に公的資金を200億円受けており、実際のところ筆者にも詳しいことは分からないのだが、K銀行はその県に本社を置き、県民の預金残高の38%を持ち、総資産が3兆3,262億円あると公表されている。従ってもし経営が行き詰まり倒産すれば、その県や県の金融、経済は動かなくなり、大問題になる。だから県は勿論、政府や金融庁が何等かの手を打つはずだから、しばらく様子を見た方がよいという結論になったが、今後の経済動向を考えると取引銀行はやはり2行以上にしておくべきであると思う。

 

 野村総合研究所の推定によれば、金融資産(預貯金、株式、一次払い・年金保険からローン等の負債を引いた金額で、当然不動産は含めない)が5億円以上ある層を「超富裕層」といい、推定3万2,000人(世帯)、「富裕層」は金融資産が1億円以上5億円未満で、推定81万3,000人(同)、「準富裕層」は5,000万円以上1億円未満、推定280万4,000人(同)、「アッパーマス層」が3,000万円以上5,000万円未満、推定701万9,000人(同)、3,000万円未満を「マス層」と呼び3,831万5,000人(同)だそうである。日本全体の金融資産総額は1,500兆円で、上記の「起富裕層」と「富裕層」の1億円以上の金融資産所有者数では、世界では2番目に多いのだそうである。

 

 自分はそれぞれどの層に属するかは、密かに計算してもらう必要があるが、今後の経済動向、特にアメリカに端を発して世界に波及している「サブプライムローン」(信用の低いローン)問題や「デリバティブ」(ある一定の範囲の価格変動に対してリスクを他の業者が保証する保険)問題が、信用不安を引き起こして経済を混乱させる事件が今後も増えてくるのではないか。銀行や証券会社が借入金の増加を避けて、債務を細切れの債券にしてばら撒いてしまっていることが混乱を増幅させている。この経済状況は簡単に好転しないと思う。従って今後の経営においては資産の防衛が不可欠になる。

 

 先ず現物の「金」を考えるべきだと思う。経済が混乱すればするほど金が安定した価値を維持してくれるし、いざとなったときには即現金化できる。できれば金の現物は、定期的に少しずつ購入しておきたい。ただ現物で持つと物騒だから保管してもらう必要がある。次に考えるべきは「外貨」である。それもーつではなく、資源国のオーストラリア・ドル、ユーロ、ポンドで外貨を保有する。必ず定期預金にしておく。次は日本の国債である(利率変動国債を発行しているのは日本だけではないか。ある意味では「亡国国債」である)。長期国債ではなく10年国債を考える。同時に日本郵政公社の簡易保険(安全性の面なら)、同時に株価が低迷している今こそ、高い技術をもった超優良企業の株式を買っておく。資産防衛のために、こうした資産に分散させておくべきである。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2008年10月号より転載〕