コラム

今月のコラム

2013年 1月号

歯科医院経営を考える(424)
~日本の現場力~

デンタル・マネジメント
コンサルティング

稲岡 勲

 日本の電機メーカー8社の平成24年3月期の決算内容を見ると、パナソニックが7,721億円、ソニーが4,566億円、シャープが3,760億円、NECが1,102億円の赤字になっている。一方富士通が427億円の黒字、日立が3,471億円、東芝が737億円、三菱電機が1,120億円の黒字を計上している。上位2社の赤字は過去最高の赤字である。その原因はテレビを中心とした家電事業の失敗とされている。価格下落が著しいテレビ事業にどれだけ早く見切りをつけて撤退したかがその業績に出ていると言う。テレビ事業に集中し、想定していた通りの収益が得られなかったという構造的な経営戦略の失敗ということであり、厳しい言い方をすれば有能な経営者がいなかったということだ。この戦略の失敗によってパナソニック、ソニー、シャープの3社は大規模な人員削減を行っている。ソニーが1万人規模で、パナソニックでも本社の人員を7000人から数百人規模まで削減するという。一方堅調な業績を残しているのが重電系のメーカーである。日立は3年前の2009年3月期決算では7,873億円の赤字を計上したが、家電関連は外注に出し、小型の電力設備やインフラ開発における鉄道システムの保守や点検等のアフターサービス付の事業に力を入れており、また開発途上国のインフラ整備の受注にも力を入れ、安定した経営実績を残している。経営トップの打ち出す経営戦略が的確で、的を得たものであれば、日本「現場力」はどこにも負けない力を発揮し、素晴らしい成果を出す土壌がある。

 

 東日本大震災による福島原発事故の報告書が公表されているが、あれを読めば混乱したとはいえ原発の現場での対応が良かったからあの程度で済んだともいえる。それに比べて東電本社や通産省や政府の対応の拙さが際立っているのがよく分かる。また自動車の制御に使われるマイコンの世界最大の半導体メーカーのルネサス・エレクトロニクスの工場は北茨城にあるが、被災して復旧するのに8月末までかかるとされていたのを、5月の連休明けには工場を再開している。一時は、部品・部材の供給源から日本を外そうという動きも出たそうだが、それが不可能と判断され免れたといわれている。アップルの「iPhone5」は、液晶内部にタッチパネル機能を組み込んだ「イン・セル型」という方式なのだそうだが、これには高い技術力が必要とされ、我が国ではジャパン・ディスプレイとシャープ、韓国のLGしか作れないと言われているし、シャープの「IGZO」(イグゾー)と呼ばれる技術を使った高精細液晶は、ほぼシャープだけが現在世界で唯一量産化に成功した分野だと言われている。日本の強みはこうした「技術を伴ったサービス力」に抜群の強さを持っているといわれているが、今後の飛躍に期待したい。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2013年 1月号より転載〕