コラム

今月のコラム

2012年 8月号

歯科医院経営を考える(419)
~楽しい歯科医院づくり~

デンタル・マネジメント
コンサルティング

稲岡 勲

 日本歯科医療管理学会総会が今年は沖縄で開催され出席した。大会のメインテーマが「楽しい歯科医院」という今までにないユニークなテーマだった。特別講演の高津茂樹先生の講演も「院内でうれしいことをメモすると、歯科医院はどんどん楽しくなる」というテーマで意味深い内容だった。それぞれの人間の持っている感情は、理屈で割り切れないものがある。それを理屈で「楽しく」しようと号令をかけても白々しい雰囲気になるのがオチである。そこで「うれしい」と感じたことをできるだけ多くメモする。それを院内でそれぞれが公表しあうことで院内が楽しくなるという。こうした事実の積み上げと幸せ体験が重要ではないか。

 

主に九州地方の歯科医院で衛生士144人、歯科助手118人にアンケート調査もされているが、衛生士の「うれしい」ことの体験事例では、「ブリッジや義歯の印象がきれいに取れた時」「主任を任された時」「リコールハガキにいつも一言メッセージとイラストを書いていたら、あなたのハガキを楽しみにしている」とか「もっと早く磨き方を習いたかった。今日来てよかった」と患者から言われたとき、また同僚からは「子供からお年寄りまで、相手にあった言葉づかい、気配りをしていたら、後輩から尊敬された」等々が報告されている。歯科助手も「お疲れ様でしたと声をかけたら、ホッとされた表情で痛みが取れてよかったと感謝された」とか「年配の患者さんを待合室からユニットまで手をとって誘導したとき、お礼を言われた」等の回答が寄せられている。アンケートでも「うれしい」ことをたくさん経験している衛生士は、院内が「大変楽しい」と感じている比率は68%、「うれしい」ことをまあまあ体験している衛生士が、院内は「大変楽しい」と感じている比率は29%であり、両者を合わせると97%になる。つまり「うれしい」体験を多く持つことが院内で「大変楽しい」と感じる要因になっていることである。

 

高津先生は「ありがとう」と言われると誰も「うれしいな」と感じる、だから『私も「ありがとう」と言おう』⇒みんなに「ありがとう」と言って感謝の気持を伝えよう⇒院内雰囲気が良くなっていく気がする⇒1日1回「ありがとう」と言っているか⇒周りを見渡して「ありがとう」と言われることを探そうと提唱されている。このような「うれしい」こと探しのように前向きになることが大切なのではないか。特に言葉数の少ない口下手の先生にとって、このような雰囲気作りは大切だと思う。また文房具屋に行くとSHOT NOTEという手のひらサイズのメモ帳が売っており、これをIPhoneやAndroid対応でカメラに収めて整理できるようになっているから院内で検討、整理するには便利である。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2012年 8月号より転載〕