コラム

今月のコラム

2009年 2月号

歯科医院経営を考える(377)
~心の触れあい~

デンタル・マネジメント
コンサルティング

稲岡 勲

 現在我が国の結婚に関する統計で、結婚後、第1子が生まれる期間の平均が0.6箇月(約7ヶ月)という統計がある。つまりなかなか結婚に踏み切れないが、同棲、半同棲している間に妊娠してしまったから結婚するというパターンが定着して、なし崩し的に結婚するという「出来ちゃった婚」が、結婚するカップルの50%以上を占めているという。現在男性の結婚平均年齢は34歳だそうだが、面白いことに所得の高い人ほど早く、所得の低い人ほど遅くなっているという。何故か?。

 

 今や結婚するか否かの決定権は女性が握っているという。その女性の多くは親と同居していて、独身貴族を満喫し、海外旅行や、買い物をして、親の生活レベルをスタンダードと考えているからだという。子供の親離れ、また親の子離れができていないことが原因の一つである。だから若い男性はせっせと貯金に励んで生活インフラが整った段階で求婚するから晩婚になり、インフラの整わない者は結婚できなくなる。都心の歯科医院のスタッフでも意外に同棲している人が多いという。しかしそれが日本の少子化の大きな原因の一つであり、我が国将来の社会福祉制度にかかわってくるとすれば問題視せざるを得ない。昨今話題になっている派遣社員となると、その生活基盤は極めて脆弱だ。当初労働者派遣法は専門性の高い人の派遣がテーマだったはずだが、メーカーの単純労働に拡大され、メーカーの景気調節弁に利用されたのは、15年程前のバブル崩壊後のことである。急激な景気後退局面で派遣切りやリストラが始まっているが、メーカー側にとっては当然のことで、そのようにしないと会社が倒産する可能性があるからである。いずれにしても今後急速に経済が冷え込むはずだから、更に失業者は増えると思う。

 

 

 しかし一般業界の不況は、医療界、福祉事業界にとっては追風であり、人材確保の好機である。今まで医療界で働くことは3K「キツイ、キタナイ、キケン」等といって敬遠されてきたし、特に最近は福祉施設から若い人材が逃げ出していたから、この機会をとらえて優秀な人材獲得に本腰を入れるべきである。と同時に医療機関で働くことの意義や意味をPRし、職場環境を整備すべきである。

 

 

 先日、NHKのTVで、20歳代の若者3名(学生、フリーター、女性会社員)が、愛媛県の蜜柑農家に1週間体験人村して蜜柑の摘み取りを手伝うというドキュメンタリーを放映していたが、農家の人たちと触れあうことで、人情のこまやかさや温かさに触れて懸命に働き、指示されてもいないお宮さんの掃除をするというハプニングも紹介されていた。感想を聞かれて涙する光景を見て、その3人の若者の「人の心」を忘れていないことに何故かホッとするとともに、そのような出会いの場を提供する医療や福祉の揚をもっと準備すべきであると思う。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2009年02月号より転載〕