コラム

今月のコラム

2010年 10月号

歯科医院経営を考える(397)
~無駄な医療費~

デンタル・マネジメント
コンサルティング

稲岡 勲

 厚労省が発表した平成18年度の国民医療費は33兆1,276億円であり、一人当たりの医療費は259,300円である。ところで年齢別医療費の医科と歯科を比較してみると、65歳未満の一人当たり医科の医療費が112,800円に対して、歯科は17,000円、65歳以上の医科医療費は512,600円、に対して歯科医療費は29,400円である。さらに75歳以上では医科が648,800円に対して、歯科は25,000円である。

 

 高年齢化するほど歯科医療費の割合が医科に比べて低下していく。足腰が悪くなれば歯科医院への通院が困難になり、寝たきりになれば在宅診療に頼ることになる。従って今後歯科医療費を減少させないためにも在宅診療に力を入れる必要があり、さらに高齢化する前に歯や口腔の健康に対する意識向上を徹底させ、歯を残す戦略が不可欠であると思う。我が国の医療費は毎年1兆円ちかく増え続けているが、GDP(国内総生産)比は8%とOECD加盟国(EUとアメリカ、日本、カナダ、オーストラリア等加入)より1%程度低い値になっている。相対的に低い医療費で世界トップレベルの死亡率の低さや健康を維持しているというのは優れた医療水準であり効率だというべきだが、しかし医療費を公的部門が負担する割合が82%と、他のOECD加盟国(平均72%といわれている)と比べて10%ほど高い値になっている。今後急激に高齢者が増えていくが、その場合の医療費の膨張は計り知れない。その場合不評であろうとも高齢者の自己負担をある程度引き上げないと効率の悪い医療費の無駄な消費に結びつくのではないか。

 

 2008年現在の透析の患者は28万人と言われているが、生活習慣病といわれる糖尿病から腎不全に移行するケースが急激に増え、新患者は年間3万人といわれる。2000万人の成人に腎機能低下がみられ、うち400万人が透析予備軍と発表している(日本腎臓学会)。現在すでに透析医療費が1兆円を超えているという。(「日本の聖域」選択編集部編、新潮社刊)1人の患者で月40万円かかるが患者の自己負担は1万円であり、その1万円も自治体から補助されるから患者自身には負担感がないといわれる。それよりも問題なのは、透析病院では透析に至らない患者でも前倒しで導入させられるケースが相次いでいるという。それが事実とすれば由々しい問題である。2006年に240万円のワイロを受け取ったとして豊橋市民病院腎臓内科の部長と紹介先のAクリニックの院長が逮捕される事件があった。Aクリニックは2005年の収入は7億2,000万円、うち上記の部長が紹介した患者の医療費は1億600万円にのぼっているという。医療といえどもどこかでチェック機能が働かないと暴走して無駄な医療費が使われてしまう。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2010年10月号より転載〕