コラム

今月のコラム

2009年 4月号

歯科医院経営を考える(379)
~医院という船のエンジン~

デンタル・マネジメント
コンサルティング

稲岡 勲

 毎年20数件の歯科医院の決算(個人事業)を見ているが、今年は、対前年比で収入が伸びている歯科医院は68%で、減少している歯科医院が32%、約3軒のうち2軒が収入を伸ばしていた。今年(平成20年)の大きな特徴は、後期高齢者医療が4月より実施されたことにより、社保収入が減少し、国保も若干減少して、後期高齢者医療費収入が国保の半分程度になっている。全体としては保険収入が若干増加している。地域によっては、不況の影響をまともに受けた歯科医院もあり、都心部では自費収入が2~3割程度減少している。

 

 上記の歯科医院の収入の平均伸び率は3.2%で、平均収入は51,146千円である。最高の収入が86,116千円、最低は15,455千円(共に院長1人の医院)である。年齢とともに収入が減少していくのは如何ともし難いが、若い働き盛りの先生の収入が減少しているケースもある。

 

 若い働き盛りの先生で収入を落としている先生の問題点は、百年1日の如く、同じコトを言い、同じコトを繰り返している。つまり自分のことしか考えていない姿勢の医院か、スタッフとのコミュニケーションが上手くとれず、スタッフとの間に隙間風が吹き、ちぐはぐな対応をしている医院である。また逆にやる気が前面に出すぎて患者の腰が引けてしまうケースもある。このようなケースの場合は、こちらの収入を上げたいと言う姿勢が見えみえになり、患者の思いや期待や悩みに充分耳を傾けていないことが多い。しかもスタッフが非協力的で、院長だけが一人頑張っているという例が多い。今後の歯科医院経営を考えると、スタッフの協力なくしては成り立たない。そのためにはスタッフの思いや悩み、期待にも応えていかなくてはならない。患者に対しても、スタッフに対しても気配りは避けられないが、気配りだけでは消極的になり強い体質の歯科医院にはならない。他人への配慮をしつつ、自己の意思や考えをどのように伝えていくか、どう折り合いをつけていくかが問われる。船が前に進もうとすると、水の抵抗を受けるが、それを押し戻して力強く前に進まないと船は進まないのと同じである。その場合の船のエンジンに当たるのが、院長の医療への情熱であり、責任感であり、目の前の患者に対する「何とかしてやりたい」という思いである。

 

 例えば、自費診療を勧める院長に抵抗するスタッフがいる医院があるが、これは保険診療の採算性の認識をしっかり教えるとともに、徹底した医療の品質へのこだわりを認識させていないからである。同時に医療の品質にばかり目を向けていると、保険診療なのに、時間コストは自費診療なみに掛け、それが当然のように考えてしまうから、この両面の認識を高める努力が必要なのである。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2009年04月号より転載〕