コラム

今月のコラム

2013年 2月号

歯科医院経営を考える(425)
~歯科医院の経営実態~

デンタル・マネジメント
コンサルティング

稲岡 勲

 毎年歯科医院を対象に収支アンケート調査を実施しているが、その分析結果が12月に出る。その関係で毎年12月~1月はアンケートに回答いただいた先生の簡単な経営状況についてのコメントを書く時期となり結構忙しい。この調査は昭和53年分の収支から実施しており、平成23年分の収支アンケートで34回目となる。当初は関係先の歯科医院50医院くらいから始まったと思うが、最近は120院弱となっている。最近の特徴は2代目に移っている医院が多くなったことである。総じて収入は子供の代になると減少する傾向にあり、それだけ環境が厳しくなった証拠である。一番大きい変化は人件費の増加である。昭和53年当時は給与賃金の収入に対する比率は16~17%程度で、福利厚生費も2%前後だった。それが平成23年には22.4%になっている。福利厚生費の比率は変わらないが、福利厚生費も含めた人件費は24.4%で、総収入の4分の1が人件費である。

 

 これは保険点数等にも現れているように、補綴の点数が低下したことと、人手をかけないと点数にならないという保険請求の内容を反映した形になっていると思う。専従者給与もその内容を見ると、歯科医師の専従者が2,310千円で、歯科医師以外が4,814千円と逆転している。これは息子や娘の力量に応じて支払っている正直な姿を反映しているのだと思う。大雑把にいえば収入の4分の1(25%)が人件費で、外注技工料を含めた原価が20%、専従者給与を含めたその他の経費が30%で、差引所得が25%という比率になる。当然のことだが、院長の診療方針によっても経営指数は大きく変化する。例えば歯周・予防に重点を置いた診療方針の場合は、原価が5%程度になり外注技工も2~3%になる。逆に人件費が30%をはるかに超えてくるし、スタッフ1人当たりの月額収入(生産性)が低くなる。ただしこのような比率になる場合は、院長の補綴治療も少ない医院の場合で、補綴治療が多い場合は、このような極端な比率にはならない。

 

経営的にみて将来を見据えた理想的な方針というのは、歯周・予防をベースにして補綴診療、それも自費診療を総収入の20%程度以上を維持することである。「歯周・予防をベース」にするというのは患者の口腔衛生意識が高くなるからである。逆に言えば高くなるような指導が前提である。歯周・予防をベースにといっても衛生士がいなければどうにもならないが、今後の医院経営を考えた場合、徹底した患者の目線に立った診療方針を徹底させることもーつの方法だと思う。ある歯科医院では全員がTA(エリックバーンの開発した交流分析・トランザクショナルアナリシス)の講習を受けて、「気づき」をどう高めるか、また相手の立場をどう理解して心を通わせるか等実践的な研修を実施し好評を得ている医院もある。その歯科医院では患者にもそのような講習会を1回3000円程度で公開している。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2013年 2月号より転載〕