2010年 5月号
歯科医院経営を考える(392)
~歯科医院経営の黄金ルール~
デンタル・マネジメント
コンサルティング
稲岡 勲
筆者が所属している国際ボランティア団体のパイロットクラブ(アメリカ、ジョージア州のメイコンが本部)の全国大会が高松で開催されたので行ってきた。その会議の講演会で講師を務めた高松市の「NPO法人セカンドハンド」の理事長、平野キャサリン氏の話が興味深い内容だった。同氏はカナダのODAのコンサルタント会社に勤めて、主として開発国援助の仕事をしていた人だが、作りっ放し、やりっ放しの援助に疑問を感じて、これは先進国のためにやっているのではないかと不信感を持ち、一人の学生が始めた奉仕活動に参加して、現在はその活動拠点「NPO法人セカンドハンド」の代表を務めている。(セカンドハンドとは、「一本の手は自分のために、もう一本の手は他人のために」という意味である。支援者から無償で提供された品物を、無料もしくは格安で借りた店舗で販売し、収益金を国際協力の資金に充て、運営は無償のボランティアスタッフが行い、主にカンボジアを中心に支援している。カンボジアはポルポト政権によって優秀な人材が根こそぎ殺されてしまい、国を背負う優秀な人材が少ないと言われている)同氏がボランティア活動の黄金ルールとして挙げた中で次の2つが歯科医院経営にも通じると思う。
その一つは、「相手を幸せにしようと思うなら先ず相手のことを考える」ことにあり、先ず相手をよく見て何が必要かを考えることだという。魚を与えるだけではなく、魚の釣り方を教えることだという。2番目は人材育成である。エンパワーメントつまり組織自体が成長していくためには、基本的な考え方や手法、ビジョンを共有化して、そのビジョン実現のために学習し、その過程で成員の潜在力を引き出し生かすことだという。セカンドハンドの学生部である「小指会」は中学生から大学生まで参加しており、毎年そのうちの数名をカンボジアに連れて行き、カンボジアの学生と交流体験をさせている。「小指会」の「カンボジア体験記」には、次のような女子高校1年生の体験が掲載されていた。「電気があって、綺麗な道路があって、椅麗な水があって…私は、毎日を当たり前のように過ごしてきた。私は日本では考えられない事を見たり聞いたり体験した。……当たり前だったことが当たり前じゃない生活。私には時間が、物が、お金が全てそろっている。だからこそ私なりの無駄のない時間の過ごし方をしたいし、しなくちゃいけないと思った。カンボジアの人たちのように心の強さを持ち続けたいと思う」と綴っている。
患者の幸せを考えるなら、患者のことを考え、この患者にとって何が今必要かを考え、患者自身にそれを気づかせることであり、エンパワーメントつまりスタッフの潜在力を引き出すためには、基本的な考え、ビジョンを語り共有化して、そのビジョン実現のために学習し学びあうことである。それが組織全体を成長させていくのだと思う。
(つづく)
〔タマヰニュース2010年 5月号より転載〕