2010年 4月号
歯科医院経営を考える(391)
~歯周・予防のメンテナンス~
デンタル・マネジメント
コンサルティング
稲岡 勲
今年も20件足らずの歯科医院の確定申告書作成のお手伝いをしたが、全体の対前年比の収入は4.2%の減少であった。増加した医院数は42.1%、6割近い歯科医院が減少したことになる。最高の落ち込み額は18,983千円、最高に伸びた額は7,431千円の歯科医院であった。大きく収入が落ちたこの歯科医院は自費収入の減少が大きいが、大きく収入が減少した歯科医院には二通りのパターンがあるように思う。一つはこの歯科医院のように自費収入の落ち込みの大きい歯科医院であり、経済の好不景に左右されており、どちらかといえば都心部に多い。一方保険収入が大きく落ち込んでいる歯科医院があるが、これも立地条件の影響が大きいように思う。比較的所得の低い階層の多い地域では、患者が次の予約を取らずに「電話で予約しますから」等といって治療が中断になるケースが多い。従って患者数の減少が影響している。一般的には地方の歯科医院の収入が安定していると思うが、地方でも平均年齢が50歳、60歳代の歯科医院では平均して収入減少が目立っている。徐々に世代交代が進んでいるようである。院長の高齢化と共に患者層も高齢化していくが、若いスタッフを多く入れたり、内装を変えたりして積極的に「アンチエイジング戦略」をとっている歯科医院の場合はそうでもないが、子供が全部大学を卒業して夫婦2人だけで、のんびり診療等という歯科医院の収入の落ち込みが大きい。しかし経営的には何ら問題ないのである。先日聞いた話だが奈良県の平均レセプト枚数が100枚足らずであるという。もっと多いのではないかと意外な感じがするが、高齢の院長の歯科医院が相対的に多く平均値を引き下げているのである。
比較的安定した実績を挙げているのが、歯周・予防のメンテナンスに力を入れている歯科医院の場合である。歯科衛生士を2人以上置いて、専門的に積極的にメンテナンスを行っている歯科医院の場合は収入が安定しており上下幅が小さいように思う。患者にメンテナンスの知識が普及してくると、年間3回~4回は来院するからそのような患者が何人いるかでメンテナンスによる年間収入が読めるのである。またこのような患者は歯に対する意識が高いから院長の方針にもよるが、積極的に自費診療を勧めると自費への移行が多くなるのである。
今後益々高齢化が進むと同時に、医療保険財政は極めて厳しい状況に置かれることは明らかである。とすれば若い院長の場合は特に自費診療に活路を見出さざるを得ない。そのためにも歯周・予防のメンテナンスを積極的に取り入れることが不可欠ではないかと思う。それも衛生士に丸投げしないで、最初は院長自らがスケーラーを振るくらいの積極的な姿勢で臨むべきである。
(つづく)
〔タマヰニュース2010年 4月号より転載〕