2011年 5月号
歯科医院経営を考える(404)
~緊急事態におけるリーダーシップ~
デンタル・マネジメント
コンサルティング
稲岡 勲
東日本大震災の行方不明者が未だに13,800人を数えるという。歯科の先生も8名が亡くなられている(日本歯科新聞)。最も痛ましいのは石巻市の大川小学校である。全校児童108名中、64名が死亡、10名が行方不明という。地震発生から40~50分後に津波が襲ったというが、学校の近くに裏山があったのに雪が積もっていたこともあり、全員点呼して避難誘導の途中で披にのまれた。全校生徒が避難して全員無事だった学枚もあった。上級生が下級生を引率して避難させ、以前から避難場所として指定されていた場所が危険と判断してより高い場所に避難して助かった。こうした事例を聞くと、強いリーダーの存在と日頃の危機管理及び避難訓練の重要性を痛切に感じる。
原子力安全基盤機構が2010年10月に電源を喪失し冷却機能を失った原子炉は、1時間40分ほどで核燃料が溶け出す炉心溶融を引き起こすことを指摘していたにも関わらず、電源を失うという事態への対策が準備されていなかったという。しかも昨年10月の原子力総合防災訓練では、首相も参加して中部電力の浜岡原発が原子炉すべての冷却機能が喪失して放射性物質放出の恐れがあるという想定で訓練していたというから想定外等とは言えないのではないか。原子力安全委員会という組織は「国による安全規制について、基本的な考え方を決定し行政機関や事業者を指導する」また「内閣総理大臣を通じた関係行政機関への勧告権を有するなど、通常の審議会にはない強い権限を持っています」とある。今回の事故で検証されるべきは、こうした組織が本当に機能していたのかということである。原子力安全委員会の議事録を見ると、大災害が発生した当日及び14日、17日のいずれの臨時会議もわずか5分で終っているというのも理解できない。
東京電力は津波の高さを7~8メートルと想定していたというが実際には14メートルの波が押し寄せて非常用電源が使えなくなった。何故7~8メートルと想定したかの根拠も曖昧である。こうした個々の組織の行動を精査してみると行動目的、指示命令、迅速性、統一性に何か不透明さを見る思いがする。日本の組織の弱点は個々の構成員が全体の雰囲気に流される点である。皆が賛成しているのに自分一人が反対することへの後ろめたさが付いて回り、不本意ながら賛成してしまって誰も責任を取らないという問題である。今回の事故で政府、東京電力、原子力保安院との3つの組織がばらばらに情報を発信していると批判されている。「地震発生から5日目の3月15日、政府は東京電力との統合連絡本部を東電本社内に設置した。だが、遅きに失したのは明らかだ。1号機で水素爆発が起きた12日から、規制・監督当局である原子力安全・保安院で取材を開始。事態が進展する中、逆に事態解決に向けた主尊者の不在から官邸、保安院、東電という三者の間で危機管理のタガが次第に外れていくのを感じた」と日経の記者が書いている。
(つづく)
〔タマヰニュース2011年 5月号より転載〕