コラム

今月のコラム

2010年 7月号

科医院経営を考える(394)
~人材(財)力~

デンタル・マネジメント
コンサルティング

稲岡 勲

 パナソニックが公表した2011年春の新卒採用計画は、国内外合わせて前年比10%増しの1390人で、うち国内採用は前年比210人滅の290人、一方海外採用は、47%増の1100人で過去最多だそうである。今後新卒採用に占める海外採用の比率を8割まで高めるという。最近は旭硝子や楽天といったグローバル企業といわれる企業の多くは、国内ではなく海外の人材採用を大幅に増やしてきている。2000年前後の就職氷河期に次いで第二の就職氷河期が始まったといわれるが、このような状況が続けば学生の就職環境が良くなることはないのではないか。大企業の多くは海外採用を増やして、国内の採用を抑制している事実を公表しなくなっているという。世論の反感を買う恐れがあるからである。就職環境ばかりでなく、学生の学力も低下しているといわれる。今年3月に来日したハーバード大学のドルー・ファウスト学長は日本人留学生の減少に懸念を表明したという。ハーバード大学は理工系のマサチューセッツ工科大学とともに、世界から優秀な学生が集まる屈指の大学だが、今年の1年生の内韓国人は200人、中国人が300人に対して日本人はたったの1人だという。留学がすべてではないが、日本の若者の学力も積極的な意欲も減退しているのであれば問題だ。国にしても、企業にしても今後の発展を左右するものは人材である。国力も企業力も結局は人材(人財)力なのだ。国際競争も、企業間競争も優秀な人材なくして成り立たないのである。最近国際受注競争の原子力発電所建設や高速鉄道設置で日本は立て続けに韓国に敗退しているのもこうした人材力の差が出てきているのかもしれない。歯科医院のようなサービス業においては特にその傾向が顕著にでてくると思う。歯科医院の競争力は技術と設備、応対力にあると思うが、特にスタッフの占める能力が大きい。例えば衛生士の能力ではスケーリング・ルートプレーニング等の技術とともに、患者との人間関係をスムーズに築けるコミュニケーション能力が要求される。それと「医療職」に従事しているという誇りと意欲である。このような職業上の意識を高めるために院長の理念の浸透が欠かせない。院長は繰り返し理念を語り、何のために存在しているかをしっかりスタッフの心に浸透させる努力が重要だと思う。それもスタッフの目線で考え、目線で語り訴えることだ。と同時に待遇面でも高い水準を維持する努力を惜しまないことである。常に設備、医療技術、応対そうしてスタッフの待遇面でも最高の水準を目指し、他の医院との差別化を図ることである。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2010年 7月号より転載〕