コラム

今月のコラム

2014年 8月号

歯科医院経営を考える(443)
~周術期口腔機能管理と医科・歯科連携~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 全国特定施設事業者協議会やサービス付高齢者向け住宅協会等4団体が5月下旬~6月10日にかけて1764か所の高齢者向け住宅や集合住宅を対象に実施した医科の訪問診療に関する調査では、調査対象の8.8%に当たる155か所で医師の撤退や交代が発生したと報じている。(平成26年7月5日、日経夕刊)今年の点数改定では、医科においても(歯科は前から実施されている)同じ日に、同じ建物内で複数の患者を診察した場合従来の点数を大幅にカットしてしまったからである。例えば「在宅時医学総合管理料」は「同一の建物内」であれば(月2回の訪問が前提)4600点を一気に1100点に、訪問診療科は特定施設等が400点から203点へと減点された。これは在宅医療に手厚い診療報酬を出すことによって入院患者を減らそうとした方針に対して、若いドクターを採用して多くの患者を短時間で手早く診察するといった不適切な例や、介護付き老人ホームなどに入居する患者を紹介する見返りに医療機関から手数料(約20%と言われている)を取る患者紹介ビジネスを排除する狙いからだといわれている。

 

いずれにしても性急な方向転換がもたらす弊害が発生した今年の点数改定ではあったが、今回の改定で注目すべきは「周術期口腔機能管理」である。全国公私病院連盟(1526病院が加盟)が96病院を対象にした調査では、9割近い83病院が歯科機能については「医科疾患で入院している患者の口腔管理」「入院患者誤嚥牲肺炎予防」「入院患者の栄養摂取管理」を求めているといった歯科との連携に期待する回答が多かったという。(日本歯科新聞)千葉県旭市の総合病院国保旭中央病院では、2012年4月から2013年9月までの間、胃癌で開腹胃切除・全摘出した全114症例について、歯科医や歯科衛生士による口腔機能管理を実施した群と、従来の看護師による口内清拭のみを行った群とに分けて術後の入院日数を比較した結果、有意差はなかったが、口腔機能管理実施群は11.7日で、実施なし群の16.0日より短く、在院日数が短縮する傾向が見られたという。

 

(日経「ヘルスケア」5月号)全床が回復期リハビリテーション病棟である長崎リハビリテーション病院では、地元の16歯科医院と連携して「長崎脳卒中等口腔ケア支援システム」を構築しているという。(同誌)こうした病院側の取り組みは口腔機能の回復によって入院医療の質を高め、退院を早める結果につながっているからである。歯科医師の教育内容には当然医科の内容も含まれているが、残念ながら医師の教育課程には「歯科」に関連した教育内容がなく(口腔外科では受けていると思うが)、病院側からの歯科に対する積極的なアプローチが低いのではないか。とすれば歯科の方からの積極的な働きかけが不可欠ではないかと思う。最近病院で歯科衛生士の採用が増えていると言われているのもこうした傾向の反映ではないかと思う。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2014年8月号より転載〕