コラム

今月のコラム

2014年 7月号

歯科医院経営を考える(442)
~医療の永続性と法人化~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 グリム童話にこういう話があるそうだ。神様が動物にそれぞれ30年の寿命を授けるといった。そうしたらロバは「ムチでたたかれて労働を強いられる毎日だから、そんなに長い寿命はいらない」といった。そこで神様は18年引いてロバの寿命を12年にされた。次のイヌも「尻尾を振って愛想しても足腰がつらいから、そんなに長い寿命はいらない」といった。そこで神様はイヌには12年を引いて18年にした。さるも「そんなに長い寿命はいらない。ボケて人の機嫌を取るのはごめんだ」といったので神様は、10年引いて20年の寿命にした。最後の人間は、「30年では足らない」といったので、神様はロバの18年、イヌの12年、サルの10年を足して、人間には40年を加えて70年を授けられた。だから人間は、30年間は楽しく充実した人生を歩むが、それを過ぎて48歳ころまではロバが経験するつらい厳しい人生を、続いての12年はイヌが経験する歯もダメになり足腰も立たないつまらない人生を、続いての10年はボケて人を笑わせるすべも持たない人生を送るのが人間であるというのである。しかし神様はさらに人間に10年を加えて今では80歳をはるかに超えている。

 

人生80年とすれば、60歳が定年とはあまりにも早すぎる。少なくとも70歳までは現役で頑張るべきだと思う。歯科の先生でも身体が元気なら70歳までは診療を続けるべきだと思う。そうすると30代、40代は駆け出しである。この時代は徹底した学びの時代として、治療や診断の技術や管理ノウハウを徹底的に追い求め、極める時代ではないか。特にこの時代は修得した技術やノウハウを深める時代にするべきだ。50代、60代はそうして学んだ知識、技術を自分の中でまとめ体系化する時代である。それは実際に学んできた知識、技術を実際に自医院の患者に広め普及するとともに、後輩の歯科医師の教育と指導に当たるという時代ととらえる。そういう意味からも歯科医院の安定した経営を確保する適正規模は歯科医師が2~3名といったところだと思う。そのうえで法人化するのが望ましいと考える。

 

現医療法での医療法人は持ち分の定めのない医療法人しか認められていない(解散時には出資した金額しか戻らず、余剰の資金は国もしくは地方公共団体に没収される)が、それだけ公共性を強くしたいという国の考えであろう。優秀な勤務医でも無理して個人開業するよりも、法人化された歯科医院で勤務医として働き、治療や研修にじっくり取り組める環境のほうが、将来性からみても最善だと思う。また相続問題で悩むこともなくなるし、歯科医師が3名いれば、矯正や歯周治療の専門医が在籍することでより広い治療も可能となる。しかも国は国の競争力を高めるために法人税率を35%から25%に引き下げようとしているから節税効果も大きくなる。思い切って法人化することを勧めたいと思う。

(つづく)

 

〔タマヰニュース2014年7月号より転載〕