2014年 5月号
歯科医院経営を考える(440)
~気遣いのできる人柄~
デンタル・マネジメント
コンサルティング
稲岡 勲
先日、30年ほど前に法人設立のお手伝をした歯科医院の院長から写真集が送られてきた。その添え書きに「この度『おもてなしの心を学ぶ』と題しました私たちの活動記録とも言うべき内容の写真集を作成いたしましたのでお送りさせていただきます」とある。この先生は都心から近い某県の市内で、守衛によって24時間守られている超高級住宅街の別荘に、ありとあらゆる種類のバラを植え、プールを設置し100人ほど収容できる部屋にピアノを置き、20名ほどが宿泊できる超高級の別荘を持っているのである。そこでは研修会や勉強会を開き、時には患者を招いてスタッフ料理講習会や音楽会等を開いている。また才能はあるがまだ売れていない若い音楽家や車イステニスプレーヤーを招き、彼らの努力する姿勢や生き方を学び、支援するというNPO法人活動もしている。「ローズガーデンとゲストハウスを通じて様々な体験をさせていただき、手料理研究委員や文化活動委員をはじめTeam HDCが一丸となって皆様におもてなしをさせて頂く記録をご紹介させていただいております。どうぞよろしかったらご覧ください」と書いてある。この先生の場合、歯科大卒業と同時にアメリカに渡りインプラントや歯周治療の技術を学び、帰国後現在までに5診療所を設立し法人化して今に至っている。
「医療に関する専門的な知識や技術以外に大切なことがあります。それは気遣いができる人柄であり、皆様が信頼してくださる教養を身に着けることです。世界の一流に触れる様々な体験によって個性や感性を磨いてきました。さらに輝く努力を惜しまずに続ける姿を見て頂きたいと思います」と結んでいる。自費診療収入は一時に比べてかなり減少したが、ほとんど減少していない医院もある。自費診療受診患者の層の厚い医院の典型が上記のような医院である。勿論保険診療も実施しているが、5剖強が自費収入である。大阪に阪堺電車という市電がある。帝塚山近辺は比較的所得の高い層が居住しているが、それ以南は下町の中を走っている。ある駅に降りて30mほど歩く間に新築された比較的小さい家の軒先にべンツが1台、BMWが3台駐車している。風情は下町でも結構所得が低くないことを示している。30分で都心に出られるから、都心からこちらに移り住んできている人が多い。しかも比較的年齢構成が若いのが特徴である。
今政府は混合診療の拡充の実施を検討しているといわれている。おもに景気刺激策の一環としての政策誘導のようだが、現在の年齢別人口構成を見れば、消費税が引き上げられたとしても、少なくとも5~6年先には医療保険の財政が行き詰まることは目に見えている。点数の上げ下げに一喜一憂をするだけでなく、もう少し先に目を据えて、現在通院してきている患者の歯への意識改革と患者一人一人との密着した関係づくりが不可欠ではないか。
(つづく)
〔タマヰニュース2014年5月号より転載〕