コラム

今月のコラム

2014年 4月号

歯科医院経営を考える(439)
~生活支援としての歯科の役割~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 

 平成26年度の診療報酬の改定が実施され、初診料が218点→234点、再診料が42点→45点に引き上げられた。初診料が7.3%、再診料が7.1%の引き上げである。確実に現実の収入が増える点数だからプラスにはなるが、現実にどれほどの収入増加が実現するか注目したい。日歯では消費税増税分を初再診料に明確に加算することを求めていたから、初診料が16点、再診料が3点増となったのは一応日歯の主張が通ったことになる。またいろいろ条件がついているようだが、CAD/CAM装置を使って(実際に設置していなくても設置している技工所と連携があればよいとされている)作られたCAD/CAM冠1歯につき1200点が保険導入された。これなどは今後増えてくる可能性が高く収入増の一翼を担うのではないかと思う。CAD/CAMやCT等の先端の器械装置使用に対して、条件付きではあるが保険導入がなされてきた。

 

医科のように新しい治療技術が保険に導入される傾向がつづくのかどうか注目したい。昭和50~60年にかけて日本経済の高度成長が進み歯科は治療技術の進歩とともに、自費診療が盛況の時代であった。一般に保険診療への関心が低く、医科のように保険にこだわって新しい技術の保険への導入に対して、歯科の先生方の関心が余り向いていなかったように思う。その後差額徴収が問題となり差額徴収禁止の時代を経て以後、保険診療と自費診療の区分が明確になり、保険と自費の併用診療の禁止とともに、日本経済の停滞が続き自費診療需要の低迷時代となって歯科医院経営受難の時代に入ったと認識している。今後の日本経済の構造的な問題や人口構成問題、或は所得格差の問題、財政状況等を考えると果たしてこのような状況下で未来は展望ができるのだろうか?医療費全体に占める歯科医療費の比率が徐々に低下してきており7%を切る状況にある現状を見据えて、自医院の長期経営戦略を立てておく必要があるのではないか。

 

日歯の大久保会長は、日本インプラント学会 関東・甲信越支部学術大会の基調講演「高齢社会における歯科医療の役割」で、「歯科は患者の生活を守る医療であり、医科は患者の命を守る医療である。どちらも同等の重要性を持つ」とし、今後歯科が進むべき道として、①ガン連携及び周術期口腔機能管理、②在宅医療の推進の二つが柱になると話されているが、患者の生活の質を高める医療をどう展開するか具体的な提案ができる医院造りが不可欠だと思う。食道ガンで経管栄養を受け徐々にうつ症状になり、ポケも始まっていた患者が、自分の歯で食物を噛んで食べるようになって以後、意識も明瞭になり他人との会話もできるようになったという報告がTVで紹介されていたが、こうした患者の生活支援としての歯科の役割は今後益々重要になってくるのではないかと思う。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2014年4月号より転載〕