2013年 12月号
歯科医院経営を考える(435)
~症例検討会~
デンタル・マネジメント
コンサルティング
稲岡 勲
大阪市内で開業しているF歯科医院では、衛生士と分っていても、患者から「先生」と呼ばれ尊敬の眼差しを受けていると聞いたことがあるが、院内にそのような雰囲気があれば、スタッフも自然と勉強への意欲を高め仕事への意欲も高くなるものである。ただそのレベルまで持っていくために何が必要か、どうすればよいのか?当然ながら院長自身の医療技術や歯周予防への関心と意欲、同時にそれへの実践が不可欠である。
今年の夏に実施した収支アンケート調査の分析を進めているが、衛生士が2名以上いる歯科医院の収入が比較的安定しているという結果が出ている。全ての医院で言えることではないが、これは衛生士により患者の口腔衛生意識を高め患者自身の歯への健康観を作り上げて、患者が自発的に歯科医院に通院してくるからである。1日の患者数の3~4割がメンテナンスのために通院してくるようになれば、収入は実に安定した状況になる。そこに至るまでには院長の歯周・予防への取り組み姿勢が不可欠だが、衛生士と一緒に研修会や講演に出かけ学んでいただき、院長自身が歯周・予防への知識を高めていただく必要がある。何故か?院長が衛生士に丸投げしてしまい意識、関心を自分の専門の補綴に向けたまま衛生士の業務や問題に無関心だと衛生士の能力が伸びなかったりチームワークが崩れたりする。また逆に衛生士の能力が高くなってくると院長の診療方針に対して批判してくる場合がある。これは医院の理念やビジョンに歯周・予防への取り組み姿勢が明記されていないか、明記されていてもその実践面の行動が伴っていないからである。つまり院長自身の意識がそこまで高まっていないからである。その意味で院長(歯科医師)と衛生士による症例検討会を持ってそれぞれの立場で議論しあう機会を作って勉強していただくことを勧めたい。
最初からレベルの高い症例検討会にならなくても、院長の方から質問や問題を投げかけて調べたり、勉強しないと答えられない雰囲気を作るとともに、よい回答や案には賛辞を送り励ます等、対等に議論する雰囲気を作ることが大切である。このような症例検討会を持ち議論することで補綴領域の問題と予防領域の問題の接点が具体的に明確になってくるはずである。しかも患者の人間性(性格、嗜好、好み、考え等)の領域まで踏み込んでどのような治療や口腔衛生指導を行うことがその患者にとって最良か、等の深い議論をするとともに、衛生士がその患者にどのように話してあげるべきか、どう指導するべきかまで視野に置いて議論することを勧めたい。こうしたスタッフと密接に議論しあいながら診療を進めていくには、①院長自身が実行するという覚悟を決めること、②素直にスタッフの意見に耳を傾ける、③イエスかノーかの結論を早く出すことと即行動を起こすこと、④必ず成功するという思いを描き信念を持つことである。
(つづく)
〔タマヰニュース2013年12月号より転載〕