コラム

今月のコラム

2015年 1月号

歯科医院経営を考える(448)
~衛生士の確保と労働条件~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 アベノミクスの成否が問題になっているが、明らかに求人数は増え厚労省が発表した平成26年10月の有効求人倍率(1人の求職者に対する求人数)は1.10(最低は沖縄、埼玉の0.76、最高は東京の1.59)で、新規求人倍率は1.69だったと公表され雇用面では好況を反映している。特に歯科関係では歯科衛生士と歯科技工士の充足率が著しく低い状態である。技工士の場合も深刻だが、歯科医院の場合は個人開業が圧倒的に多いから、衛生士の確保が極めて難しい。今後予防歯科医療の推進や急速に進む地域包括ケアに関与していくには歯科衛生士の確保は不可欠である。現在歯科衛生士学校は約150あり、毎年約6000人が新たに資格を取得すると言われる。東京では求人1人に対して100件以上の求人数があるとされ、初任給を月額25万円でも応募がないという状況にある。平成24年度の時点では登録衛生士数は24万人、そのうち就業者は11万人と言われているから半分以上も就業していないことになる。今後歯科衛生士の確保を目指すなら新卒、既卒者を問わず、給与面、勤務時間、能力開発支援、福利厚生面等の労働条件等の環境整備が不可欠である。

 

歯科衛生士の平均勤続年数は3年前後と言われるが、労務の専門家は他の職種に比べて雇用者側、被雇用者側ともに人事、労務に関する認識が甘いという。先ず給与面では、新卒者の初任給で最も多いのは22万円、続いて関東圏では23万円、3位が21万円となっており、関西圏では2位が21万円、3位が23万円となっている。(「月刊歯科医療経済」より)少し中心部から外れるとこれより1~1.5万円程度下がるようだが、求人難の環境を反映して初任給が上がってきていることに注意が必要である。なお既卒者の場合は、この初任給に1~2万円が上乗せされているという。この給与額は基本給、職務手当等を含む金額だが、基本給はこの金額の80%程度である。これに皆勤手当が上乗せされる。

 

DMCの調査では、歯科医院の休診日で一番多いのは週2日と祝祭日で53.7%となっているが、商業施設等で開業している歯科医院の場合は、365日営業という例もある。しかしそういう医院は完全週休2日制になっている場合が多い。一般の歯科医院の場合は、勤務時間についても朝9時から夕方6時まで、昼の休みが1時間で1日8時間労働、木曜日と日曜日が休診という例が多い。最近の若い衛生士の場合は、労働時間に対する意識が高いから、残業時間についてもしっかり計算して不満が残らないよう配慮する必要がある。例えば昼の休みの時間が短くなったような場合を勘案して「みなし残業」として残業時間にプラスしておく等の配慮が必要である。残業の時間単価もキチンと1.25倍で計算するべきであり、より長く働いてもらえるような環境整備が必要である。常勤にしてもパートにしても働く衛生士のライフスタイルに合わせて労働条件をきめ細かく設定して、長く働いてもらえる環境を作り上げることである。

(今年もよろしくお願い申し上げます。つづく))

 

〔タマヰニュース2015年 1月号より転載〕