コラム

今月のコラム

2015年 5月号

歯科医院経営を考える(452)
~短時間正社員制度~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 政府は働き方の選択肢を広げるという趣旨で労働を成果で評価するという考え方(従って時間外手当がゼロになる)やフレックスタイム制の拡大を図り、3か月単位で残業代を計算する方法等、労働基準法の改正案を閣議決定している。景気回復という目的もあり給与賃金や働き方等労働行政に対して力を入れてきている。それに対しての助成金制度(キャリアアップ助成金)も多岐にわたる。

 

例えば①正規雇用等転換にかかる助成金制度では、期間を定めて採用している従業員を正規の従業員として採用した場合は、従業員1人当たり50万円の助成金を支給、②正規雇用労働者を「短時間正社員」に転換もしくは新たに短期正社員を雇い入れた場合は1人当たり20万円の助成金支給、③有期契約労働者等に一般職業訓練を実施した場合は1人1時間当たり800円の賃金助成と、100時間未満の場合で1人10万円、100~200時間が1人20万円、200時間以上が1人30万円の経費助成金支給、④有期契約社員の基本給等を2%以上引き上げた場合は1人につき3万円の助成金(処遇改善の助成金)支給、⑤有期契約社員等を対象とする「法定外の健康診断制度」を新たに規定し、延べ4人以上実施した場合は、1事業所あたりに40万円の助成金支給、⑥労働者の週所定労働時間を25時間未満から30時間以上に延長し、社会保険を適用した場合は、1人当たり10万円の助成金支給等々である。

 

現在の歯科医院で主流となっている若い女性スタッフ(20~24歳)の人口は、総務省統計局の平成23年10月時点での「国勢調査」によれば、3,116千人となっているが、同年の10~14歳の女性人口は2,884千人である。10年後には232千人減少することが確実である。一方では高齢化が進み退職する人も増え、労働人口が急激に減少することを考えれば、長期的な視点で現在の人材の定着を図ることが極めて重要になる。特に歯科医院経営にとっての歯科衛生士の確保は重要な経営戦略の一つになる。その意味で上記の「短時間正社員」の制度を検討してみる価値があるのではないか。育児・介護休暇制度は法律で決められていることもあり、整備している医院は多いが、短時間正社員制度はまだまだ普及はしていない。だからこそ導入の価値があると思う。これは正規の従業員に比べて短い勤務時間を認め且つ給与面では基本給や賞与も支払い正規の従業員と同等の扱いをするというものである。勿論勤務時間が短いから全額ではないが、時間当たりの基本給、賞与、退職金等が同等であることが条件となっている。育児休暇期間は無給であっても雇用保険から育児休業給付金が給与の50%程度支払われるから問題はないが、まだ子供が小さい間はパートになるケースが多い。しかしあえて正規の従業員と同じ扱いにして、安心、安定して勤務できる制度を考えるべきではないか。この制度を導入し1日10時間勤務、週休3日の勤務体制に移行している医院も出ている。

 

(つづく))

 

〔タマヰニュース2015年 5月号より転載〕