2015年 4月号
歯科医院経営を考える(451)
~適正な歯科医師数は~
デンタル・マネジメント
コンサルティング
稲岡 勲
各地の歯科医院を訪問していると、医院の子息が歯科大学や医科大学に進学したり、卒業して国家試験を受験したりで、慌ただしい家庭がある。世代交代の準備が着々と進んでいる家庭も有れば、医系の大学に入れず、また入っても国家試験に合格できず、親子間で感情のもつれが生じている家庭もある。医系の大学では必ず国家試験の関門を通過しなければならず、家庭内が緊張感で張り詰めた状況になるときがある。医科・歯科専攻の学生の居る家庭での精神的緊張は極めて大きい。過去にも奈良で医学部受験にうるさい父親の医師を殺害した学生がいた。こうした悲劇が起こらないことを祈るばかりだ。ただ無資任な言い方だが、「医学の道」だけが人生ではないのだから、子供の個性や能力、性格を見て医糸以外の道を歩ませる寛容性も必要だと思う。子供の性格や能力によっては医系に向かない子供もいる。それを見抜いて親が無理強いしないことが大切で、ついついそれ以外に人生がないという見方をしてしまうのは親子にとっても不幸になると思う。
開くところによれば最近の歯科医師の国家試験の合格者数が制限されていると聞く。歯科医師過剰の影響であろうが、受験する者にとってこれほど不条理なことはない。国が定めた内容の学術知識を修め基準を満たしているなら合格させるべきではないか。歯科医師数が多いのであれば、大学の定員を減らすべきである。歯科大学の中には国試の合格率の低下を気にして大学の卒業生の数を制限しているところもあると聞く。本末転倒もいいところでひどい話だ。受験生の人生を台無しにしてしまう恐れがあることを承知しているのだろうか?不合格にされ留年させられた方こそ迷惑なことであり、留年中の授業料を考えても親にとっても大きな負担になる。親にとってみれば子供を人質に取られているようなものだ。勿論合格の基準点は明確にされるべきだし、合否は明確であるべきだが、合格者数が制限されるというのは合点がいかない。国家試験そのものの権威を失墜させることにもなるのではないか。
日本歯科医師会は新規参入歯科医師数を年間1,500人という推計を打ち出している。そうした数値も参考にされているのかもしれないが、現在の歯科医師の平均年齢が50歳を超えている現状から考えて果たして10年、20年の長期的を視点で考えた時、その人数で十分なのかどうか。また歯科医療の内容、特に医科との連携等を考えると、医療、福祉、社会保障制度の見直しが実施される中で、歯科医療の役割が大きく変貌することも視野に入れる必要があるのではないか。寝たきりになり介護を必要とするようになると、歯をたくさん持っている人の方がかえってやりにくいと知り合いの医科の先生は言うが、それが実態であるとすれば、今後高齢人口が増え、介護人口が増えてきたときに、その人たちの歯をどのように管理し、維持し、保存していくのか、予測し準備しておくべきだと思う。
(つづく))
〔タマヰニュース2015年 4月号より転載〕