コラム

今月のコラム

2015年 2月号

歯科医院経営を考える(449)
~患者への働きかけを~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 政府・与党連絡会議では次期通常国会を「改革断行国会」と位置付け、業界団体が守ってきた「岩盤規制」の打破に本格的に取り組むという。岩盤規制の一つである農協改革が現在進行中で、農協の上部構造としての全国農業協同組合中央会(JA全中)の改革が進められており、農協の上部構造であるJA全中を一般社団法人にする予定という。そうなると上からの指示で全国の農協を動かすことができなくなるわけだ。政府とJA全中の睨み合いが続いているが、いずれ医療制度改革の問題になることは目に見えている。新年度の予算案が確定したが一般会計96兆3,420億円のうち、社会保障費は32.7%を占める31兆5,297億円となった。団塊の世代の最後の年齢層の人が75歳を迎える2025年間題の解決策として、今後医療費の削減が大きな問題になると思う。年末の衆議院選挙では社会保障費抑制の問題は全くと言っていいほど話題にならなかったが、何よりも一番大きく且つ重要な問題は増え続ける医療費をどうするかである。どう考えても現状のままで医療制度を維持することは不可能である。

 

筆者の近くに奈良医大があるが、広大な駐車場が満杯になり、日曜日以外は人混みでごった返している。奈良医大に限らず大きい病院はどこも満員御礼の賑わいである。多くの病院では入院費の高い救急・重症向け病床を増やし、全体では厚労省が必要としている数の10倍以上の36万床に上る一方、リハビリ向けは10万床を割り込んでいるという。救急・重症向けの入院基本料はリハビリ向けの約1.5倍の1日当たり16,000円弱になるから、病院はこぞって重症向け病床を増やしているからである。入院医療費は医療費全体の約4割を占め約16兆円だという。(1月4日付日経新聞)今後「地域医療構想」の策定により、適正な病床数の算定方法の指針を提示して削減するという。

 

一方で厚労省は予防重視の姿勢を鮮明にしており、歯のメンテナンスを実施している患者の健康についてヘルスケアー研究会に調査依頼が来ているという。10年以上メンテナンスを続けている患者2,500名の健康データーにより、歯のメンテナンスと健康との関係を把握することが目的のようである。まだまだ一般には全身の健康と歯の健康との関係については理解が十分ではない。日本歯科医師会が実施した「歯科医療に関する一般生活者意識調査」の「歯科と全身の健康に関する認知」の状況では、歯周病と糖尿病や心臓疾患など様々な全身疾患の関係に関連する質問のすべてについて「まったく知らない」とする回答が5割を超えており、まだまだ身体の健康における歯科医療の重要性認知度が低いと言わざるを得ない。もっともっと一般の人への働きかけが必要である。その意味で歯科医院での歯周・予防のメンテナンスの場において、全身との関係について患者の意識を変える働きかけが必要ではないか。歯だけの話しで終わっているのはもったいない話し(歯無し)だ。

(つづく))

 

〔タマヰニュース2015年 2月号より転載〕