2015年 7月号
歯科医院経営を考える(454)
~経営の安定化と医療法人~
デンタル・マネジメント
コンサルティング
稲岡 勲
TV等で活躍している室井祐月氏が東京都女性歯科医師の会で講演し、日歯の大久保会長と対談している。大久保会長が「女性ならではの発想による意見で組織が変わる可能性についても期待している」と述べたのに対して、「組織の看板的な役割で入っている女性は、女の目から見れば単に男社会の中で上手くやっているだけという風に感じます。もし組織に女性を入れるならば、意見が言いやすいように半数近く女性にするか、女性から選ばれた女性を入れなければ本音の意見は出ないように思います」と厳しい意見を述べている。
最近は国の政策においても女性の活用が叫ばれているが、本当に女性の社会進出を図るつもりならその程度のことは徹底して実行する必要があると思う。例えば主婦の収入に対する「年間103万円の壁」と言われる優遇税制は、厳しい見方をすれば働かない者の優遇であり、「頑張らなかった者勝ち」の制度だという意見もある。家庭の標準モデルが「夫と専業主婦と子供2人」だとしていることもおかしい。「夫婦共稼ぎで子供3人」をモデルとしてこの標準家庭を全ての面で優遇する制度に改めるべきではないか。先進国で少子化を克服したのは女性の社会進出を達成した国だということを銘記すべきだ。歯科医院にとっては衛生士、歯科助手、受付は全て女性であり、一見女性の論理が優先しているように見えるが、実態は個人事業で院長の意向が極めて強く反映されていて、その院長の思想に大きく左右されるのが実態である。
今後上記のような女性の社会進出が強くなってきた場合の歯科医院のマネジメントのありようも大きく変わるのではないか。例えば、有給休暇でも規定通り与えている医院はまだ少数ではないか。ましてやパートの有給までは手が出ていないと思う。今後は少子化が進み、若い女性の確保は極めて困難になる。産休、育休制度の導入は勿論、パートであっても労働保険加入を義務付け、安定した雇用体制を構築することが不可欠になる。ただ安心してお産ができ、安心して子育てができる。また健康なら65歳まで働ける、こうした従業員にとって安心のできる雇用体制を作ろうとする場合、どうしても経営にゆとりがなければ実行は難しく、歯科医師1人の個人事業では不可能にならざるを得ない。そういう意味からも歯科医師3~5人程度の歯科医院で法人化が大きな課題になると思う。以前は「節税」という切り札が法人化の目的であったと思う。しかし時代が変わり、今や患者にとっても、またスタッフにとっても安心のできる経営を目指すなら法人化を考えるべきである。しかも法人税率は25.9%から23.9%に引き下げられた。今後も国際競争の面から法人税率の引き下げの可能性が高いと思う。今後の歯科医院経営を考えた場合、雇用制度の維持安定、長期の経営の安定化を図る意味からも法人成りを真剣に考えるべきではないか。
(つづく))
〔タマヰニュース2015年 7月号より転載〕