コラム

今月のコラム

2016年05月号

歯科医院経営を考える(464)
~国の幸福度指標~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 経済指標の一つにGDP(Gross Domestic Product:国内総生産)というのがある。国内で1年間に生産された総額を表す指標であり、アベノミクスでは実質GDP2%成長が掲げられている。またGDP600兆円という具体的な目標も掲げられている。日本は中国に次いで世界で第3番目のGDPを挙げており、2014年で約552兆円のGDPを挙げている。ただこのGDPはこの指標を提唱したサイモン・クズネッツがアメリカ議会で証言している通り、「GDPでは国民の幸せは測れない」のである。もとはその国の軍事力を測るために考案されたものだそうである。従って国民の幸福度を測る指標ではない。そこで国連では2012年に暮らしの質を計測した新統計と報告書「総合的な豊かさ報告書2012年」を発行し公表した。

 

新統計では経済成長率ではなく、一国の経済活動の持続可能度を示す四つの資本、①国民の頭脳力である人的資本、②人が生産した資本、③国民の信頼関係である社会関係資本、④農業や鉱物資源を中心とした天然資本の四つの資本残高を計算しているが、日本は国全体ではアメリカに次いで世界で二位だそうである。(「日本経済の質はなぜ世界最高なのか」福島清彦著PHP新書)(なお国民一人当たりのGDPは2013年で24~28位である)

 

しかし上記の4つの資本のうち、③の社会関係資本というのは、人と人の信頼関係の高さ、協調行動がとられる度合い、投票率、治安、教育、健康、人々が抱く幸福感等多くの指標から判断するとなっているが、具体的には数値化されていない。日本の場合、先ず①の人口増加と質の確保だ。2人目の出産をためらう人が調査対象の75%に上り、その理由に経済的な理由を挙げた人が86%になっているという。(前書)所得格差が進んでいるということも原因の一つだが、思い切って2人目の子供を産んだ夫婦には月額10万円、3人目の子供を産んだ夫婦には月額15万円を支給するくらいの政策をとるべきだ。またUR都市機構(住宅公団)では民間団地を借り上げて賃貸しているが、その空室率が19%だという。狭い2部屋を1部屋に改築して、若い夫婦で子供を2人以上産んでいる夫婦には格安で貸し出すくらいの方法をとるべきだ。

 

質の問題は日本の4年制大学進学率は51%で先進国平均65%より14%も低い進学率である。オーストラリアでは96%、韓国でも71%である。経済的に困窮している学生には国の育英資金から無利息で貸し出す制度を完備すべきであり、教育に関する予算は長期展望に立って支出すべきだ。最後の④の天然資本としての農業への支援策である。農業は高齢化が激しく平成23年の統計では耕作放棄地が全農地の40%に達しているという。放棄地への固定資産税を上げて手放しやすくすることと、農地の売買を容易にして株式会社の農業経営を促進するべきであり、山林への投資を促進するためにも森林組合を強化して計画的に国の資金を投資するべきだと思う。GDPばかりを追うのではなく生活内容に注目するべきだ。

(つづく))

 

〔タマヰニュース2016年05月号より転載〕