コラム

今月のコラム

2016年10月号

歯科医院経営を考える(469)
~院長の決断と待遇の公平性~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 今までいろいろな歯科医院を見てきたが、歯科医院は院長の思想、考え、性格、クセがそのまま院内の雰囲気、すなわち医院の体質にあらわれる。目の届かないところでスタッフがさぼっていないか気になるというので、自動車のバックミラーを院内に2か所設置したという院長もいれば、スタッフの誕生日には1万円のお祝いを渡して1日休暇を与え、家で父や母と一緒に食事をするよう指示し、1か月に1回、美容院に行ってきれいになった日は、その費用を負担するという医院もある。院長の考えによっていろいろな歯科医院があってよいのだが、規模は小さくても集団で仕事をしていくのだから、最後は院長(トップ)の決断が必要になるときがある。またスタッフに対して、自分の意志を押し切らないと前に進まない場合がある。組織のトップは孤独であると言われるのはそういう場合を指しているが、何時まで経っても決断しないで先伸ばしする院長がいる。小さな組織であっても集団で仕事を遂行していく場合は、最低限のルールがあり、同時に公私の区別というルールもある。信頼していたスタッフからセクハラで訴えられた院長もいる。心にスキがあるととんでもない事件に巻き込まれる場合が出てくる。そうかといって公私の区別を厳格に守っていると堅苦しい院長と敬遠される。また待遇面では、できるだけ公平に扱う医院であるべきである。ある歯科医院のスタッフは、衛生士以外はすべてパートで、常勤の衛生士と同じ時間働いてもパートという制度を取っている医院がある。院長も認める能力の高い53歳のパートのベテランの歯科助手が、陰で院長の悪口を言い、何かにつけて若い衛生士や助手、受付けに大きい影響を及ぼしている。院長は欠勤の場合は事前に届けを出すか、緊急の場合は電話連絡する等の手続きをとるよう指示しているが、この歯科助手だけは時々無断欠勤したり、遅刻したりする。つまり院長の方針に抵抗しているのだが、院長は衛生士だけを特別扱いにしていることに不満を持っていることが理解できないのである。歯科助手ではあっても常勤とし、年齢、能力からみても院長の片腕として処遇すれば大きい戦力になるのだが、そういう発想ができない。人手不足が深刻になり今後は歯科医院どうしの競争ではなく他業界の中小の企業との競争になる時代。視野を広げて若い人の興味関心にも目を向けていく必要がある。

(つづく))

 

〔タマヰニュース2016年010月号より転載〕