コラム

今月のコラム

2016年08月号

歯科医院経営を考える(467)
~うすき石仏ネット~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 東京医科歯科大で開催された第57回日本歯科医療管理学会に出席した。その中で講演された臼杵市医師会医療福祉総合センター長 舛友一洋先生の講演「地域包括ケア時代における医科歯科連携とICT活用」に強い興味を感じた。大分県臼杵市は人口約4万人弱、地方の小都市である。そこに「うすき石仏ネット」というICT(IT)による医療情報ネットワークを構築して素晴らしい実績を挙げている。平成28年4月現在で9050人が「うすき石仏カード」を持っているというから普及率は20%を超えている。その目的として挙げられているのは、「患者様のプライバシー保護を厳重に図りながら、診療情報、介護情報の一部を、参加機関間を結ぶネットワークで共有し診療、検査などから得られた多くのデーターを基に治療法を検討し、わかりやすく説明を行い、質の高い安全な医療サービス、介護サービスの提供を可能にすることを目的にしている」としている。インターネットでも見られるので見ていただければわかるが、病院、医院、歯科医院、調剤薬局、健診、介護施設、訪問着護ステーション、居宅介護支援事務所に消防署も含めた広域のネットワークを作り上げ、それらの機関が連携して患者を見守る体制が出来ていることである。その趣旨に賛同すれば同意書にサインをして石仏カードをもらい加入することができるという。ただその石仏カードには患者情報は入っておらず、以前にかかった医療機関が持つ自分の医療現場情報が見られる鍵になっているのだという。患者がどういう薬を飲んでいるかとか、どのような持病を持っているか、認知症の診断を受けているか等の情報が分かるというのは、患者にとっても安心できるし、何よりも医療機関にとって重要な患者情報が入手でき、投薬する場合も安心できる。ただ地域に密着してお互いの顔が見える関係にあるというくらいだからこそ良好な関係が維持できるのだと思う。こうしたICTのネットワークは人口5万人以下の小都市だからこそ有効に機能するのだと思う。問題は今後高齢化が進み人口減少が進んだ時に機能の維持ができるかと言うことである。医療・介護の包括ケアのネットワーク機能を維持していくには、人口動向、交通機関、地域の産業経済等々横の連携が重要になる。つまりその前提になる産業づくり、町づくり、人づくり等の地域活性化の戦略上の視点が不可欠となってくると思う。 税務署の人事異動は毎年7月10日付で実施される。だからこの前後の日程での税務調査はまずない。上記のような事情で6月の調査は何か重要な案件があっての調査ではなく定型的な調査だと言われる。6月の調査は比較的軽く、形式的な調査である場合が多い。人事異動後の9月~12月は本格的な税務調査期間である。

(つづく))

 

〔タマヰニュース2016年08月号より転載〕