2016年09月号
歯科医院経営を考える(467)
~自分の限界に挑戦する~
デンタル・マネジメント
コンサルティング
稲岡 勲
リオのオリンピック会場では日本選手の活躍が目覚しい。特に女子のレスリングが素晴らしい成績を挙げている。58キロ級で伊調馨が、48キロ級では登坂絵莉、69キロ級では土性沙羅が優勝、53キロ級の吉田沙保里だけはだめだった(とは言え銀メダルだったが)、63キロ級の川井莉沙子、75キロ級の渡利瑠穏の5人が金を手にしている。一言でいえば日頃の練習の結果だということになろうが、他の国の選手でも練習を積み上げ闘っているのだろう。とすれば日本の選手はどこが違うのだろうか?指導者、環境、能力、伝統、精神力等々どこに違いがあるのか。解説者の誰かが言っていたことだが、日本の選手は疲れていても行動を止めないことだという。外国の選手は肩で息をしながら一瞬だが手や足が止まるというのである。ところが日本の選手は常に動き続けて自分の限界に挑戦し続けているという。それは克己心の違いであり、自分の体力の限界に挑戦してそれを乗り越えてきた精神力の強さだという。こうした精神力に裏打ちされた強さはどうして生まれるのだろうか?最近は歯科医院でもスタッフの人間関係やチームワークが重要視されるようになってきたが、良好な関係の維持に力が入りすぎて無理をしなくなったのではないかと思う。限界に挑戦するという自己成長が鈍くなってきているのではないか。伸びる素質のある人材に対してはより高度な、レベルの髙い目標に向かって挑戦させる厳しさが無くなってきているのではないかと思う。生ぬるい環境ではなく、能力の高いスタッフには髙い目標を与え、能力の低いスタッフにもそれなりの目標を持たせて挑戦させるという環境は不可欠だと思う。給与体系等も勤務年数何年であれば○○円昇給といった年数に比例した給与体系が多いが、もっと能力評価を厳しくして給与格差もあってよいのではないか。ただしその能力評価があいまいでは問題が起こるから、能力評価が厳密でなくてはならないし、そうした髙い給与のスタッフに対して妬みではなく、憧れる存在になるような環境整備が不可欠である。歯周・予防への取り組みにはそうした厳しい環境整備が不可欠だと思う。生ぬるい環境からは医療事故の発生は多くなっても、能力の高い人材の育成は不可欠だと心得るべきである。
(つづく))
〔タマヰニュース2016年09月号より転載〕