2017年 1月号
歯科医院経営を考える(472)
~相続対策と遺言~
デンタル・マネジメント
コンサルティング
稲岡 勲
新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。
私共で毎年続けている歯科医院の経営指標作成が終わりホット一息ついたところだが、平成27年は前年(平成26年4月1日より消費税が5%から8%に引き上げられたために1~3月で自費収入の駆け込み需要が大きかった)の反動で、対前年比で収入が伸びた医院より減少した医院の方が多くなった。(調査対象の歯科医院は113件余である)対前年比で増えた医院が48.7%、減少した医院が51.3%であった。この調査にご協力していただいた院長の平均年齢が50歳代と60歳代の先生が57.2%を占めている。そのアンケート調査の中で相続について尋ねている項目があるが、相続対策を済ませている医院はわずか7.8%で、しかもその中で公正証書遺言により完全に対策を取られている医院はそのまた半分、つまり4%弱しかいなかった。歯科医院の事業を継いでくれる跡取りが居てもいなくても相続対策は重要ではないかと思う。相続対策をするほど財産はないと楽観されている先生は多いが、相続争いは5千万とか6千万円の少額資産の方が多いという統計が出ている。平成24年に相続争いで家庭裁判所に訴えられた件数は174,494件のうち、通産相続額1千万円未満が全体の31.9%、1千万円~5千万円未満が43.0%という統計があり、5千万以下が実に74.9%になる。今まで相談にのったケースで多かったのは、子供の一人が歯科医師で、その他の子供が医師や歯科医師ではないというケースである。必ずもめるのは、歯科大学や医科大学に入るのに多額のお金を親から出してもらったではないか、その分を我々に多く分けてもらいたいという歯科医師、医師以外の子供の声が大きくなるのである。父親が生きていればすんなり収まる話も、いないと必ずもめる。だから公正証書遺言書か、自筆証書遺言書にしておくべきである。公正証書遺言書は公証人役場に行って公証人に作成してもらう必要があり、2人以上の証人が必要になる。だから夫婦で行き、税理士に立ち会ってもらう等の方法が必要である。それが面倒な場合は、自筆証書遺言書を作る。これは必ず自筆で記入しなければならないことと、日付も自筆で書き、実印を押しておき(認め印でも認められるが)加筆訂正するときはその箇所に押印しておく必要がある。封筒に入れ必ず封をしておくことを勧めたい。封のしてある遺言書は必ず家庭裁判所で開封されるのが決まりだからである。
(つづく))
〔タマヰニュース2017年 1月号より転載〕