コラム

今月のコラム

2017年 7月号

歯科医院経営を考える(478)
~歯科技工士の位置づけ~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 歯科用CAD/CAM冠の小臼歯部歯冠補綴が平成26年度の診療報酬改定で保険導入されて以後、CAD/CAMの小臼歯の治療がかなり普及してきている。大きい規模の歯科医院では自前でCAD/CAM装置を設置している医院もあるが、一般の歯科医院では不可能である。CAD/CAM冠の施設基準では、CAD/CAM装置のない歯科医院はその装置を設置している技工所と連携していることが条件となっている。先日の歯科医療管理学会関西支部の会議で、「歯科医師が保険のCAD/CAM冠の技工作業ができるか」が話題になった。そこである先生が厚労省の医政局に問い合わせたところ近畿厚生局に聞くように指示され、近畿厚生局統括監査課に問い合わせたら「法的な回答を持っていないが、保険請求に関して言えば、①3年以上歯科医療に従事している歯科医師がいること。②歯科技工士が1名以上いること。③設備設置基準を満たし、届け出申請が受理されていること」という回答だった。歯科医師でもCAD/CAM冠(保険)の技工作業は可能で、同治療に関しても保険請求できるということであった。しかし設置基準を満たし、届け出申請をしていても技工士が居ない場合は、保険の請求ができないということであった。これは保険診療における歯科技工士の存在が認定されたということでもある。先日大阪府警生活環境課が、歯科技工士法違反容疑でS社の社長ら役員4人とパート従業員の女性2人(31歳と39歳)を書類送検したが、容疑は無資格のパート従業員2人に、歯形の読み取りや詰め物の加工をさせた歯科技工士法違反容疑であった。同社は受注から3日で納入することを売りにしていたと言われ、2013年9月から無資格の従業員が作業し、関西を中心に200軒以上の歯科医院へ補綴物などを納入していたと言われている。CAD/CAMの急激な普及で今後技工士の位置づけがどのようになっていくのかは、予測不能だが、歯科技工士の高齢化や技工士学校の定員不足が話題になっている現在、歯科技工士の法的、経済的な位置づけを明確にする必要があるのではないか。場合によっては技工士が技工に関して直接支払基金に保険請求ができる制度を考えてもよいのではないかと思う。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2017年 7月号より転載〕