2017年 4月号
歯科医院経営を考える(475)
~給与ベースの見直し~
デンタル・マネジメント
コンサルティング
稲岡 勲
最近歯科医院で目立つのは母親一人で子育てしながら働いているスタッフがいることである。歯科医院のスタッフとして働き易いという理由もあるのかもしれないが意外に多いのが気になる。こうした現状は国会でも問題になっているが、低所得層での子供の貧困問題、教育格差問題が深刻になっている。子供の6人に1人は貧困化しているというが、子供食堂というボランティア団体が経営する慈善事業が繁盛している。平成の世になって以後、日本の景気が停滞した期間が約15年間続いた結果、非正規社員が増え続け日本も所得格差が拡大して子供の貧困が問題になってきた。非正規と言っても「パート」「アルバイト」は主婦や学生が主体で空いた時間を利用して小遣い稼ぎで働いているという人もいるから、そういう人の場合は社会的な問題にはならないが、問題は若い働き盛りの人達の非正規化である。給与は正規の社員の約60%と言われる。大雑把に言って、総務省の統計による全職種の平均月額給与が341,000円であるから、その60%は約204,000円である。これでは平均家族4人の生計費としては無理である。平成28年の総務省の統計「労働調査」によれば、非正規社員2016万人のうち派遣社員が133万人、契約社員が286万人で、合計419万人である。こうした派遣社員、契約社員の給与をどう引き上げるかが課題である。今日本では長時間労働が問題になっているが、非正規社員の給与ベースも問題である。ヨーロッパ特にドイツやフランスでは非正規社員の給与は正規の社員のおおむね80%だというから日本では20%ほど低い金額になっている。時間は短くても労働の質として同じであれば同一賃金にするという考えが重要になってくるのではないか。少子化の問題は、一方で非正規社員の給与水準の問題でもある。子供を作りたくても余裕がない、結婚する経済的な余裕がない等という理由が少子化を顕在化させている。将来は子供の教育費は高校ではなく大学まで無償化するべきであり、その前提として奨学資金制度の充実を図るべきである。OECD(経済協力開発機構)の2016年の統計によれば、教育機関への公的支出の割合が日本は3.2%で、先進国33か国で下から2番目の32位である。1番がノルウェーの6.2%、イギリスが5.2%で7位、スイスが4.7%で14位、アメリカが4.2%で21位である。国の将来を担う人材の育成をおろそかにして国の将来もあり得ない。
(つづく))
〔タマヰニュース2017年 4月号より転載〕