コラム

今月のコラム

2021年 7月号

歯科医院経営を考える(525)
~医薬品研究開発への支援を~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 今回のコロナ騒動で鮮明になった問題がある。薬剤に関する高い技術力を有する我が国が、何故コロナワクチンの開発ができなかったのか、また外国からのワクチン確保が遅れてしまったのか?(5月24日から武田モデルナ社のワクチン接種が始まったが…)これまでの薬剤に対する政策課題が浮かび挙がったということではないかと思う。ただワクチンは薬価の対象になっていないが、新薬開発の意欲を削ぎ落すような薬価の大幅な改定は今後の政策課題として検討すべきであると思う。例えば2014年に小野薬品が開発したオプジーボは当初メラノーマ皮膚がんの治療薬として薬価に収載されたが、100mgで73万円という高薬価であった。体重66kgの人に1年間に投与すると年間3800万円になるということで話題になった。2015年には肺がんに適用されたが、2017年2月薬価改正では36万5千円に改定された。その後皮膚がん、腎細胞がん、胃がん等に適用され、2018年には100mg当り28万円に引き下げられたが、それでも66kgの人が1年間26回使用すると1090万円になるという。このような投薬を受けた患者でも、高額療養費制度があり、実際に負担する金額は、年間所得が770~1,160万円の人でも月額17万円ですむというから日本の保険制度は素晴らしいと思う。しかしそれによって薬品メーカーの経営が厳しくなり開発研究の余裕がなくなったのでは元も子もない。このような素晴らしい保険制度に手を付けるのではなく、国として薬品メーカーに対して薬品開発、研究への支援を手厚くすることだと思う。国として重点的に支援していく医薬品業界には思い切った支援策、助成を展開するという姿勢が必要ではないか。最近国は最低賃金を引き上げようとしているが、それによって技術力のある小規模・零細企業でもたちいかなくなり、企業淘汰が進む。そのようなことよりも大所高所に立って、残すべきものは残すという姿勢と先を見据えた手厚い支授策と補助が必要なのではないか。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2021年 7月号より転載〕