2020年06月号
歯科医院経営を考える(512)
~グローバル化への警告~
デンタル・マネジメント
コンサルティング
稲岡 勲
新型コロナウイルスの影響で、都心部の歯科医院では3~4割の収入減となっている医院も出てきている。地方でも患者と患者の間隔を広める意味で患者数を押さえている医院が多い。診療前には手の消毒と体温測定は欠かせないが、時には診療室、待合室の空気の入れ替えも必須ではないかと思う。コロナウイルスは世界的な感染に広がった。4月11日時点での感染状況はアメリカが501.6千人(死者数18.7千人)、スペイン158.2千人(同16.0千人)、イタリア147.5千人(同18.8千人)、フランス125.9千人(13.2千人)、ドイツ122.1千人(2.7千人)となっており、日本は6.7千人(同0.1千人)の感染者数である。入国拒否宣言が遅れた割には比較的感染者数が少なく死者数も少ないが、問題はこれからだ。感染者における死者数の比率が高い国は、イタリア12.7%、フランス10.4%、スペイン10.1%、アメリカ3.7%、ドイツ2.2%、日本は1.5%である。だが日本の場合、感染ルートが不明の患者が激増しており問題はこれからである。イタリアの北部が深刻な感染状況になっているのは、プラダやグッチ等の世界的なブランドのロンバルディアやトスカーナ地方に中国からの移民が約30万人も移住し、中国との交流が盛んだったということや、公立病院の医師は個人開業と兼務できるという制度のためにさぼって病院に行かず、自分のクリニックで営業していると言われている。病院の朝の出勤タイムカードの入力場所では、一人が数枚のタイムカードを押すので、監視カメラを設置しているというから凄まじい。イタリアのパンデミックはこうした風土も影響しているのだろう。日本は1996年から病院の病床数の削減を国の目標にしてきた。1996年には1,911千床だった病床が、2018年には1,641千床に、270千床減らしてきた。それが新型コロナウイルスの影響で医療崩壊の危機にさらされている。国立病院を無くし私立の病院に移行すると同時に病床数をドンドン削減してきた。全てを民営化し、効率を最優先することがそれほど重要なのか?世界は効率化とグローバル化に突っ走ってきたが、本当にグローバル化は正しいのか?何でも民営化し、国境を無くして巨大企業を生み出し、効率ばかりを追求してきたが、新型コロナウイルスのパンデミックはグローバル化への警告ではないかと思う。
(つづく)
〔タマヰニュース2020年06月号より転載〕