2020年04月号
歯科医院経営を考える(511)
~教育資金の準備~
デンタル・マネジメント
コンサルティング
稲岡 勲
毎年のことながら医歯薬系の大学入試を控えた子供がいる家庭にとって3月、4月は重苦しい季節である。入学してもらいたいが、めでたく合格しても、その後の入学金や学費の捻出で苦労するからである。しかし歯科に限って言えば、多額の学資を出しても、開業後の収入が思ったほどは上がらなくなってきているから、採算の面から言えば意味がないのではないかと思う。医歯系の国立、私立大学の学生納付金は、国立大学が1年目で82万円、2~6年で54万円(6年間の総額が352万円)となっている。これに対して私立大学では1年目が504万円、2~6年は毎年372万円、総額で2,364万円ということである。私立大学の医歯系大学の場合、さらに上記の金額にさらに付加される資金があるようだ。しかも地方からの入学となれば、下宿代も馬鹿にならない。自治医科大学の場合は、入学金100万円を含めて授業料等で1,900万円、教材費で43万円、その他諸経費(学生寮費を含む)が71万円かかり、計2,014万円程度の費用がかかる。但し自治医科大学の場合は、入学金、授業料が貸与され、卒業後に指定された公立病院等で、一定期間勤務することで貸与金の返還が免除される。つまり卒業後は勤務先が拘束はされるが、最初の入学金、授業料の2,000万円はいらないことになる。これに対して防衛医科大学は、入学金、授業料等は全くかからない。しかも入学と同時に特別職国家公務員という資格が付与されるから月額11万円程度の学生手当が支給される。但し良い話ばかりではなく、卒業後は9年間、自衛隊に勤務する義務があり、途中で離職した場合は、4,000万円超の一括返済が要求される。考えてみるべきはもう一つの方法、医学部の「地域枠」の利用である。医師として一定期間地元で働くことを条件に奨学金を支給する制度の活用だ。地方都市の医学部では多く設けられている制度である。こうした教育資金は余裕のある家庭なら問題はないが、そうでなければ老後資金も視野に入れて準備しておく必要がある。教育資金は子供が生まれた時から毎月積み立てて将来の大学費用の準備をし、子供が高校を卒業するまでは、月々の生活費で教育費を賄うようにしておくべきである。老後資金は教育資金がいらなくなった段階から準備しておくべきだと思う。
(つづく)
〔タマヰニュース2020年04月号より転載〕