コラム

今月のコラム

2020年10月号

歯科医院経営を考える(516)
~前歯部CAD/CAM冠~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 新型コロナウイルスが社会に大きな変化を生み出している。企業では社員の自宅待機やテレワーク、在宅勤務を促し、3密を避ける手法を取り入れている企業が多い。一方家庭で過ごす時間が長くなるにつれて、家庭内の人間関係も大きく変わる家族も出ている。一方ではテレワークの普及を促し、東京への一極集中が緩和されていくとともに地方への人口流出が促進される。本社を地方に移す企業も出てきている。今後日本人の意識や行動が大きく変わる可能性が高くなると思う。政府は医師会の反対を押し切って、新しい生活スタイルに合わせてオンライン診療を全ての初診患者に認める方針を打ち出したが、日本歯科新聞の報道によれば、奈良県は新型コロナウイルス感染症の影響で経営危機にある医療機関を支援するために、県内の医療機関での診療報酬1点の単価を時限的に10円から11円に引上げをする旨の意見書を厚労省に提出したという。厚労省がどのような結論を出したのかは明らかではないが、奈良県歯科医師会では減収を余儀なくされているのは、奈良県固有の問題ではないと指摘していると報じている。先のタマイニュースでも触れたが、神奈川県保険医協会が打ち出した地域別点数の容認は、一見各地方の医療機関の経営事情に配慮する点数にも見えるが、最終的には各地歯科医院を競わせて、全体の点数を低下させるという力が働くことに疑いの余地はないと思う。今後の政府と患者の動向に注意する必要がある。今後の歯科医院経営の上で注目すべきは、9月1日より前歯部CAD/CAM冠が保険収載されたことだ。保険診療に限定すれば、レジン前装冠、HJC,CAD/CAM冠と選択肢が増えることで治療の選択種が増えると思う。何故4月ではなく9月か?4月時点で、診療に使用される材料自体が保険医療材料に登録されていなかったということである。新技術や新材料が保険収載されるためには、「先進医療」「学会」「企業」の三つのルートがあると言われる。この中の「学会」ルートでは2020年度診療報酬改定に向けての可否が最終評価案として示され1月22日の中医協で確認されたが、保険収載を可とされた提案書の中で対象となる材料が、企業ルート保険診療材料ではないため、4月の診療報酬改定時に間に合わなかったということのようだ。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2020年10月号より転載〕