コラム

今月のコラム

2020年12月号

歯科医院経営を考える(518)
~パート従業員の不満~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 知り合いの先生から電話相談を受けた。38歳になる勤続15年で一番勤続年数の長いアシスタントが、最近院長の指示に反抗することが多くなり手をやいているという。勝手にアシスタントの席を離れたり、若い他の従業員に話しかけ、与えられている有給休暇の日数や取得した日数の確認をしたりしているという。そこで個別面談して、何か不満があるのかと尋ねてみたら?と提案したら、自分はもう15年勤務しているのに何故、パート扱いなのかと聞いたので、うちの医院では衛生士以外は全てパート扱いにしていると回答したという。それ以後は悉く院長に盾をつくようになったが、どうしたものかという。パートとは言え、15年も勤続の従業員を正社員にしないという院長の考えはどうかと思う。この院長にとって衛生士は歯科医院経営にとって重要な職務と考えているが、それ以外の受付やアシスタントは重要な職種ではないと考えているようである。確かに歯科医院における歯科衛生士の役割は極めて大きくなってきたと思う。しかし受付にしても、歯科助手にしても、いずれ劣らず歯科医院にとって重要な職務だと思う。院長の頭の中には、受付は単に患者の診療を受付けるだけ、アシスタントは院長の診療補助だけだという意識があるのではないか。受付は単に診療の順番を取るだけの受付、診療報酬の精算業務だけだと思っているのではないか。初診の患者なら患者の不安な心を取り除き、気分をやわらげ、明るく心を和ませ、スタッフの人達の言うとおりにしておれば安心できると肌で感じさせるそういう会話や表情、対応が何よりも重要である。アシスタントも単に院長の診療手順に従って、治療器具を手渡しするだけではない。診療台に上った患者は通院患者でも余り気分のよいものではないが、そういう患者の心理をくみ取って、明るく温かく迎える言葉や患者を安心させる応対が極めて大切なのだ。アシスタント、受付に限らず、ある一定期間勤務したら正社員として採用するというルールは職種に差を設けないことが不可欠である。勤続15年になる従業員なら、当然正社員に登用し、信頼関係を取り戻すべきだと思う。そうした差別意識は必ず従業員の意識に浸透しているから怖い。信頼関係を築いたうえで管理者に抜擢するぐらいの活用が不可欠だと思う。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2020年12月号より転載〕