コラム

今月のコラム

2017年 11月号

歯科医院経営を考える(482)
~有給休暇の付与日数~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 人手不足が深刻になり、更に大手企業電通の女子社員の過労自殺をきっかけにして、労働時間の法的規制が厳しくなり、その影響が歯科医院にも出てくるようになってきた。先日ある先生からの相談の電話がかかってきた。三か月前に退職した従業員から、突然内容証明入り郵便が届いた。開けてみたら勤務中の未払い賃金を支払えというもので、時間外賃金は支払ったはずだと思ってよく読んでみたら、朝9時からの始業だが、開始時間の30分前には出勤して診療開始の準備をするよう指示していたその30分と、終業して10分は後片付けをしてから帰るよう指示していた10分の合計1日40分、それの過去3か年分の残業代として96万3千円を支払えというものであった。現在もそのルールは生きており、出勤カードにも始業30分前の記録があるという。一度会の弁護士に相談してみるよう話したが、弁護士の先生は支払った方が後で利息の請求をされるよりはよいという返事であったという。またある歯科医院では、パート従業員の助手2人が私達には有給休暇がないのかと質問してきたので「ない」と答えたら労働基準監督署に訴えられたという。パートタイマーでも週の所定労働時間が30時間未満であっても、(1週の労働時間が30時間を超えている場合は、常勤と同じ日数の有給休暇をあたえなければならない)1週の所定労働時間が2日で、1年間の所定労働日数が72日を超えている場合は有給休暇を与えなければならないとなっている。例えば1日3時間、1週5日出勤しておれば、1年間の所定労働日数は240時間となり、6か月の勤続で7日の有給休暇を、1年6か月で8日と、1年毎に1日増えて、6年目からは15日の有給休暇を与えなければならない。しかも常勤従業員の場合は、有給休暇の請求があれば与えるだけで済むが、パートの場合は、1日の賃金を支払う必要があるから経済的な負担の影響は大きい。私共DMCの平成27年の調査では法人も含めて、「規定通り全て与えている」が31.2%、「1~3日」15.6%、「4~5日」19.5%、「6~7日」10.4%、「10日以上」が7.8%であった。規模の零細な医院ほど影響が大きくなるが、渋い顔で与えるよりは、従業員のモチベーションを高める方向に持っていく手腕が問われるということになる。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2017年11月号より転載〕