コラム

今月のコラム

2017年 8月号

歯科医院経営を考える(479)
~保険診療で経営の安定性確保~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 最近大都市以外で100%自費診療の歯科医院が減少してきているように思う。歯の咬合の治療に特化した100%自費の歯科医院とか、義歯専門の歯科医院といった特殊な治療の何軒かは承知しているが以前のように一般の歯の治療で100%自費診療という先生は、大都市を除いて少なくなっているのではないかと思う。インプラント治療を多く手がけておられるが、保険診療も同時に実施しているという場合が多い。東京近郊の歯科医院で歯科医師3人、チェアー18台、衛生士が13人、受付8人という陣容で、300坪の診療所を小児歯科診療棟、自費診療棟、保険診療棟の3棟に分け、歯のメンテナンスは自費で1日の患者数170人~180人(内メンテナンスの患者が約50%)という規模の歯科医院がある。自費診療収入が1億3,500万円、自費診療比率が60%弱で、歯のメンテナンスを年間5万円の自費で実施されているが、メンテナンスは採算が取れないという。歯周内科としての診断では1クール10万円でDNA検査、除菌、細菌検査も実施しているそうだが、それでも採算が取れないという。この先生の場合診療は9時に始まり、5時30分に終業を厳守しているという。そうしないと優秀なスタッフの確保ができないのだという。従って患者には仕事を休んで来院してもらい1日ゆっくり治療してもらう。カウンセリングルームではお茶を出しリラックスできるようにしているという。コンシェルジュや受付が接待しており、患者はゆったりと休息し、大体半日は滞在していくという。ある程度患者の歯への意識を高めながら、医院の方針を浸透させ、医院の方針に理解をしてくれる患者を増やすという方針である。理解してくれない患者は他の歯科医院に紹介してしまう徹底ぶりである。保険診療を中心にしながら自費診療も行うという歯科医院は多いが、保険診療の比率の高い医院の場合は、「か強診」の施設として登録し、往診にも出かけるという医院が多くなっているように思う。100%自費診療の医院が減少している原因はいろいろと考えられると思うが、例えばCAD/CAMを使っての小臼歯歯冠補綴の保険収載に見られるようにかなり高度な治療内容が保険治療に適用されるようになったことが大きいと思う。医療法人等の医院規模が大きくなればなるほど、安定した収入確保が不可欠となり、保険診療の安定確保が不可欠となるのであろう。TVで見かける有名人の俳優や会社役員、その家族を患者に持つ歯科医院でも、自費診療だけでは厳しく保険診療の安定確保が不可欠のようである

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2017年 8月号より転載〕