2017年 12月号
歯科医院経営を考える(483)
~副院長の課題~
デンタル・マネジメント
コンサルティング
稲岡 勲
ある親子診療の歯科医院で、そろそろ息子に院長を譲ろうと、ある日院長が、来年4月に院長を交代する旨をスタッフに話したら、スタッフ5人全員が3月で退職させていただきます、と申し入れてきたので慌てたという。母親が間に入って現在調整中とのことであったが、こういうケースはかなり多い。若い息子から見ると院長の対応が生ぬるいと感じるので、ついつい厳しい態度で臨むことになる。一方スタッフは院長の下で何年も勤務して問題なく働いてきたのに、途中から勤務医で入ってきて、息子とはいえ偉そうに采配を振るう若い息子にスタッフは辟易しているのである。息子の副院長は就業規則やマニュアルがあるのだからそれに照らして違反しているなら、それに照らして減給処分にするべきだと主張するが、スタッフの行動はそう簡単に治らないのである。アシスタントの日常の行動を見ていると、その歯科医院の院長のマネジメント(スタッフの管理)能力が良くわかる。例えば歯科医院のアシスタントは院長の治療方針によって大きく変わる。ただチェアーにくっついて座ってバキュームだけを出し入れし、セメントと印象材を練るだけの医院もあれば、事前に診療予定表を見て本日の患者の治療内容を理解し、患者を案内してチェアーに座らせ、本日の治療内容の説明までする。例えば「今日の治療は患者さんの右上の一番奥の歯の治療をさせていただきます」と断り、患者の近況を尋ね患者をリラックスさせる言葉をかけながら治療の準備を整え治療を待つ等である。それは院長のアシスタントに期待する業務内容とそれを遂行する能力をどこまで期待し行動させているかにある。院長の期待するアシスタントの行動と実際の行動が違っているのであれば、その折には本人の性格やクセを理解した上で期待している行動内容を具体的に、事例を入れて説明し実践させ、それを評価し時には褒め、時には注意しながら着実に行動させることである。副医院長がスタッフからボイコットされるのは、やにわに理想とするスタッフの在り方を押し付けようとするからだが、まず院長が「患者様を最優先に」と言いながら、長い間患者を待たせているとか、やにわに何の説明もなく治療に入るといった行動をとっているのであれば、どう改善しなければならないかを考え、スタッフの行動を子細に観察し、どこに問題があり、どういう行動を期待するのかしっかり観察することが副院長の現時点での課題なのである。
(つづく)
〔タマヰニュース2017年12月号より転載〕