コラム

今月のコラム

2017年 10月号

歯科医院経営を考える(481)
~Jコインと銀行の盛衰~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 ある先生から質問が来た。日本政策金融公庫から3,000万円借り入れ、現在残高が2,250万円あるが、地元の銀行から借り換え提案をしてきたという。団信の保険料もいらないし、無担保でよく、金利は政策金融公庫が1.15%に対して、1.135%だという。今後の返済期間135か月の利息額が総額で36万円安くなるから借り換えて欲しいと言ってきているが借り換えた方がよいか?という。今日本の銀行、特に地方の銀行は極めて厳しい環境下にある。優良融資先の企業は自己資本や内部留保が膨れ上がる一方で、経営内容の悪い中小企業への融資のリスクが大きくなっていて、金融庁から厳しいブレーキが掛けられており、容易な貸し出しが難しくなっているのである。今まで銀行は中小企業に対して貸してやっているという大きな態度で臨んできたが、最近は今話題になっているビットコインが表れ、近い将来大きく金融界を改革の渦に巻き込む可能性が出てきているのである。ビットコインは仮想通貨であり、世界中で日常生活に「使える」ようにすることを目指して作られていると言われている。仮想の通貨なので紙幣や硬貨は存在しないが、代わりにパソコンやスマートフォンをお財布代わりにして、物の売買が実現できるようにつくられているという。手数料等がいらないか、ごく少額でやり取りされるというが、こうした動きに刺激されて現在ゆうちょ銀行を初めみずほ銀行等の大手銀行が手を組み、円と等価交換できる仮想通貨の「Jコイン」を発行する準備を進めている。これは円との等価交換を前提にした仮想通貨であるから、ビットコインのように相場で上下するという不安もない。国内のお金の動きも最近はATMが普及して、その維持費に1兆円もかかり負担がおおきくなってきていると言われている。従業員の給与を振り込むと同銀行の口座間でも100~200円の手数料を取られる等、大手企業では振込み手数料だけでもばかにならない。この構想では利用者がスマホの専用アプリを通じて自分の口座から円を引き出し、Jコインに替えてコンビニや外食チェーンなどではこのコインを支払いに使う。個人間の送金は手数料がゼロになるという。Jコインが発行されれば、アッという間に普及することは間違いない。今後銀行業務が大きく変る可能性が大きく、銀行の淘汰が始まると思う。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2017年10月号より転載〕