コラム

今月のコラム

2018年 8月号

歯科医院経営を考える(491)
~今こそ公共事業の拡大を~

デンタル・マネジメント
コンサルティング


稲岡 勲

 今回の豪雨による被災者の方々に対して心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。7月12日に警視庁が発表した被災状況によれば、全国14府県で死者200人、行方不明者67人であるという。今回は九州から中部地方の岐阜県にまで及び日本の西半分が何らかの水害に遇う大災害の事態となった。天気予報の解説を聞いていると予想外の豪雨ということだが、年々災害の規模が大きくなってきているように思う。夏の平均気温の動向や海水温度の動向から明らかに地域温暖化が進んでいると思う。問題はこうした状況下にあって、国土交通省の水管理・国土保全局の資料を見ると治水事業関係費の推移は、平成8年(村山政権)の2兆2462億円をピークに年々減少しており、平成21年(麻生政権)1兆3787億円からさらに減少し、昨年は7709億円でしかない。また日本の過去の公共事業関係費(政府全体)も平成10年には補正予算分も含めて14兆9千億円であったものが、29年度予算では6兆円である。今年6月に日本土木学会が「国難をもたらす巨大災害対策についての技術検討資料」を発表したが、それによると南海トラフ地震の経済被害は20年間で1240兆円だと試算、公共インフラ投資により41%減災できるとし、公共インフラ対策の重要性を強調しているが、国は財政のプライマリーバランスに重点を置いて、徹底した財政緊縮化を図っていることが足かせ手かせになっている。しかし一旦巨大地震や広域の水害が起これば元も子もない。こういう時こそ建設国債を発行して公共事業を拡大すべきである。日本銀行の「資金循環統計」を見ればわかるが、日本銀行が所有する日本国債は昨年の3月末で約386兆7800億円、日本国債の約40%を所有している。日銀は国の子会社だから返済の必要がないものである。日本国の借金は1000兆円を超えたとか、国民1人当たり800万円超の借入金があるというプロパガンダに洗脳され、マスコミも正しく実態を伝えていない。今こそ公共事業を拡大して将来の災害に備えるべきである。民間資本の活用等という学者もいるが、国の基本となる基盤整備に民間活用等はあり得ない話である。

 

(つづく)

 

〔タマヰニュース2018年 8月号より転載〕